GW明け早々、会社から戦力外通告を言い渡されたのでデスクを片付けていると、抽斗の奥からミニロトとナンバーズ4の抽選券が出てきた。日付を見れば二カ月前になっている。社畜のようにこき使われているうちに買ったことすら忘れていたのだろう。どちらも数字選びを機械に任せるQP(クイックピック)で申し込んでいた。
上司数名と同僚においとまの挨拶を済ませて退社したしたおれは、その足で駅向かいにあるチャンスセンターに向かった。どちらか一枚でも高額当選すれば明日からの生活費に悩まなくて済むのだが、そう世の中は甘くない。ミニロト一等やナンバーズ4ストレートは数学的に望み薄の確率なのだ。
――ところが。
「おめでとうございます。ナンバーズ4がボックス当選で¥26,800ですね」
端末で数字確認したスタッフが驚いた。こちらに向けられたディスプレイに赤色で当選金額が表示されている。
「……え?」
おれの後ろに並んでいた初老の男性が祝福するように「おお」と拍手した。
「換金でよろしいですか」
「あ、はい、お願いします」
期せずして懐が温まってしまった。家賃や車のローンに充てるには心許ない金額だけれど、三年間、ブラックな会社に勤めた自分にご褒美をあげるには充分だ。
ファミレスで霜降り和牛のステーキセットを頼むか、高級酒を買って自分へのお疲れ会をアパートで開くか、当選金を元手にパチスロでさらなる一攫千金を狙うか迷ったけれど、結局、風俗に行くことに決めた。女っ気がない生活を続けてもう幾年だ。あぶく銭はアスモデウス(色欲の悪魔)に捧げたい。
駅近くの繁華街に足を運ぶと、おれは雑居ビル地下にある店に向かった。取り締まりが強化されて壊滅したと思ったJKリフレがまだ生き残っていた。
「いらっしゃいませ」
雇われ店長的な男性がカウンターの向こうで会釈する。
「初めて利用するんですが」
「当店では女の子全員、身分証で18歳以上であることを確認しております。奥のセレクトルームに待機しておりますので、気に入った女の子を番号札でお呼びください。基本料金は一時間六千円、オプションそれぞれにつき規定の料金を追加させていただきます。ただし本番行為はご遠慮ください。また、女の子が嫌がる行為や無理強いするような言動があった場合、当局に通報致しますのでご了承を。複数の女の子をオーダーする場合は、単純に基本料金とオプション料金が人数倍されます」
「そりゃ本番行為は無理でしょうね」
「人生に疲れたお客様を癒して差し上げるサロンでございます。売春宿ではありません」
雇われ店長がメニュー表を見せてくれた。
基本料金に含まれるのはトークとマッサージだけだ。オプションには添い寝、お尻枕、パンツ見せ、ち○ぽタッチ(一分間)、ブラ見せ、生おっぱい見せ、センズリ鑑賞、窒息プレイ、踏んづけプレイ、そしてコスチュームチェンジなどがあった。
「窒息プレイってなんですか」
「女の子がお客様の顔面におっぱいを押しつけるか、首を絞めて息の根を止めます」
「ああ。首を絞められて興奮する人間がいるって聞いたことあります」
「性癖は十人十色ですので」
う〜ん……とおれは唸り、メニューと予算を勘案しながら悩んだ。
結局、あぶく銭に甘えてダブルキャストを頼んだ。パンツ見せとち○ぽタッチ、そして窒息プレイがオプションだ。これで地雷を踏むようなブサイクしかいなかったら目も当てられないが。
ところが予想は外れていた。マジックミラーで仕切られたセレクトルームに待っていたのは美少女ばかりだった。カーペットが敷かれた広い部屋に女子高生がたむろする様子は、ペットの競りをするみたいでちょっと罪悪感を覚えたけれど、自発的に入店している彼女たちだから気に病む必要もないだろう。おれは3番と4番を選んだ。
「彩世ちゃんと萌美ちゃん、花道。一見さんでご祝儀あり。よろしくお願いします」
店員がインカムに喋った。『花道』は指名、『ご祝儀』はオプションの隠語だろう。
三畳ほどしかないゲストルームに入ると、間もなく彩世ちゃんと萌美ちゃんが入室してきた。女子高生マニアなのでわかるが、聖フォレスト女学院と聖ブレスト女学園の正式なブレザー姿だ。彩世ちゃんは長い黒髪をうなじ辺りで束ね上げた大柄な女の子、萌美ちゃんは栗色のショートボブをした端整な顔立ちの美少女だ。
「ドリンクは一杯だけサービスだけど、なにがいい?」
部屋の隅にある小型冷蔵庫の前にしゃがんで彩世ちゃんが言った。馴れ馴れしい口調がまたいい。
「ミネラルウォーターがあれば」
「お酒飲めないの?」
「酒臭いとイヤでしょ?」
無作法にペットボトルを渡すのではなく、ちゃんとアイスペールから氷を注いで、グラスに水をそそいでくれる。彩世ちゃんはノンアルコールビール、萌美ちゃんは緑茶を選んだ。
「乾杯」「乾杯」
ベッドで現役女子高生に挟まれる感覚は幸せでしかない。左側に彩世ちゃん、右側に萌美ちゃんだ。
「まだ夕方なのに早い帰りだね。なんのお仕事か訊いていい?」
彩世ちゃんがノンアルビールを飲んだ。
「クビになってきた。契約を取れない社員は給料泥棒だから要らないんだって」
「車の販売とか?」
「保険関係」
「冷たい会社だね。頑張ってるんだから努力を認めてあげればいいのに」
慰められて少し元気が湧いた。
「二人こそ学校は? 部活とかあるでしょ?」
萌美ちゃんがミネラルウォーターを注ぎ足してくれる。
「私も彩世も帰宅部。乳バトルの決闘も最近挑んでこられないし、お財布も寂しいからたまにリフレでアルバイトしてるの」
「乳バトルってなに?」
「おっぱいをぶつけ合う女の勝負。プライド女学院大学附属高校がこっちに越境してきてテリトリーを奪おうとしてるの。美織っていう相手の司令官、Fカップしかないくせに調子に乗ってるわ」
「よくわかんないんだけど」
「要するにおっぱいを使った女の喧嘩。『矜持衝突』か『nao』でググってみて。FOBでヒットするから」
アングラにはいろいろ未知の世界があるらしい。おっぱいを使った女の子同士の喧嘩って、ちょっと見てみたい気もする。
「おっぱいって言えば、彩世ちゃんも萌美ちゃんも巨乳だよね。何カップ?」
「私がJ、彩世がG」
「でか。ブラ選び大変じゃん」
「顔面圧迫とかまじ得意だよ。縦乳四方固めで元彼を殺しかけたことがある」
縦乳四方固めってなんだ?
「窒息させられたい」
「パンツ見せとおちん○んタッチはいいの?」
「忘れてた。25歳の男じゃないけどまずはそれで」
「誰それ? おじさん、どう見てもアラフォーじゃん」
メタの神が降りてきたと思ったらすぐに消えた。なんだっけ? 25歳の男がどうのこうのと何百回も聞いた気がする。
彩世ちゃんと萌美ちゃんが制服のスカートをめくってパンツを見せた。彩世ちゃんがJKらしからぬ黒のバタフライショーツ、萌美ちゃんがパールデザインの純白ショーツだ。若さを自慢する太ももが輝いている。
「二人ともエロいんだけど」
「スカートの中に顔突っ込んでみる? 初来店で初指名してくれた特別サービス」
彩世ちゃんの言葉に甘えて、おれはグラスを冷蔵庫の上に置くと、床にひざまずいて彩世ちゃんの股間に顔を突っ込んだ。布生地と合成繊維がバサバサと風を送ってくる。デオドラントと体臭がないまぜになったにおいが鼻孔いっぱいに広がった。真っ暗なJKテントでバタフライショーツが蠢いている。この先たった数センチに現役女子高生のお○んこがあるとは。
「彩世ばっかりずるい」
やきもちを焼いたように萌美ちゃんが唇を尖らせ、無理やりおれの顔を移動させてスカートの中に突っ込んだ。彩世ちゃんとはまた違ういい匂いがする。深呼吸すればめまいで意識を失いそうなほどだ。
「もう死んでも悔いはない」
「まだサービスの途中じゃん。死んじゃだめ」
萌美ちゃんがおれの頭を抱えるように股間に押しつけた。
「ち○ぽ見せて」
彩世ちゃんがスラックス越しにそこを指差した。
「勃起した。小さいんだけど笑わない?」
「笑わないよ。サイズなんて人それぞれじゃん。巨根だからなんですかって感じ。大きさを自慢するナンパ男より、短小でも優しい男の子のほうが好き」
経験値をカンストした達観なのか、解雇された男への憐憫なのか。
おれは二人の目の前に立つと、ためらいの「た」の字もなくズボンをおろした。そしてトランクスを脱ぎ去る。
「めっちゃ元気だし」
「全然小さくないじゃん」
自慰でしか喜びを味わえなかった井の中の蛙が、現役女子高生に鑑賞されて歓喜していた。へそにくっつきそうなくらい隆起している。
「もっとガン見してくれる?」
「変態」
嘲るように微笑んで、彩世ちゃんがフル勃起を凝視した。萌美ちゃんも吐息がかかりそうなくらい顔を近づけて熱視線を浴びせる。
「しこしこしたい」
「オプションになかったからだめ。追加するなら射精見てあげてもいいけど」
彩世ちゃんが両手でバツ印をつくった。
おれはセンズリ鑑賞を追加した。¥2,000×二人分で¥4,000の支出。だがまだあぶく銭には余裕がある。
上着まで脱ぎ去ってすっぽんぽんになり、いきり勃つ愚息を擦りはじめた。女子高生に鑑賞されているという羞恥心がエム魂を満たしてくれる。
そんな幸福な時間を満喫するように、おれは普段より遅めのスピードで肉棒をしごき、彩世ちゃんと萌美ちゃんの視線を浴びまくった。射精欲がうずくと擦る手を止め、皮を捲りきって亀頭をさらす。二人が大きさやフォルムを寸評しながら、ふざけたように吐息を吹きかける。優しい空気圧にもっと勃起した。根元を押さえて跳ね返らせてみると、ばちんっと派手な音がして愚息がへそ辺りにぶつかった。
「ち○ぽタッチお願い」
「ほぼ手コキじゃん」彩世ちゃんが笑った。
「手コキでもいい」
「そういうプレイはメニューにありません」
また両手でバツ印をつくる彩世ちゃん。しっかり境界線を守る意思が強い。もっとも、追加料金を献上すれば簡単にリクエストに応じてくれるユルさもあるが。
最先端の女子高生は生ち○ぽタッチに引け腰ではなかった。
彩世ちゃんが棹を握り、萌美ちゃんが先っぽを指先で撫で回す。そうかと思えば萌美ちゃんが肉棒を掴み、彩世ちゃんが唾を亀頭に垂らして満遍なく塗りたくった。時にはち○ぽを挟んで二人で握手する。おれのリアクションを楽しむように裏筋やカリ首を弄った。
……あっという間の一分間だった。
「出そうになってる」
「出さないで家まで持ち帰って」
萌美ちゃんが悪戯っぽく微笑んだ。
「そんな殺生な」
「せっしょうってなに? 意味わかんないんだけど」
ボキャブラリー不足も最先端の女子高生だ。おれは愚息を擦る速度を上げると遠慮なく精を解き放った。
「まじ飛び散ったし。どんだけ溜まってたのよ」
何発も放出するスペルマに彩世ちゃんが身を躱(かわ)し、軌道を目で追った。
「……幸せすぎて死にそう」
「カーペットに垂れたじゃん」
萌美ちゃんがティッシュを手に取って粘液を拭き取る。
「ブラ見せも追加したい。現役女子高生のGカップとJカップ見てみたい」
「ブラだけで満足しないで生乳まで欲張ってみたら?」
二人とも商売上手だ。誘惑されてまたあぶく銭を減らしてしまった。
彩世ちゃんと萌美ちゃんが生乳見せへのプロローグとばかりに、制服のタイを緩めてブラウスのボタンを外し、前かがみになって胸チラを覗かせた。ショーツと同じ柄のブラに収まりきらない感じで、青春いっぱいの乳房が深い谷間をつくっている。萌美ちゃんのJカップはもはや牛だ。
「パイズリ、簡単にできそうだね」
「私も萌美も楽勝。何本のち○ぽ逝かせたか覚えてない。百本は超えてるよね?」
「どっちが先に百本達成するか競争したじゃん」
「あ、そうだった。数稼ぎのために『パイ活』やったの今思い出した」
「『パイ活』ってなに?」
おれは全裸のまま首を捻った。
「パイズリだけのパパ活。知り合いの男子とかその友達、兄弟も見境なく挟んであげたの。駅ビルのバリアフリートイレとか、カラオケボックスなんかに誘ってパイズリだけして終了。みんな秒殺で楽だった」
よほどスキルが高いのか、二人のパイズリに耐えるのは至難の業のようだ。
「ちなみにどんなパイズリテクがあるの?」
「指、突っ込んでみて」
彩世ちゃんが谷間を指差した。
おれは人差し指を伸ばしてGカップのそこへ差し入れた。
「普通はこれ」
彩世ちゃんが左右の乳房を持ち上げてたぷんたぷん揺らす。
「たまにこう」
今度は交互に揺らした。
「押しつぶす系で興奮するち○ぽもある」
左右の乳房を思いっきり手繰り寄せて肉棒を圧迫するシミュレーション。両手ががっちり組まれているので、ブレザー越しにGカップのシルエットが強調された。
「あとは縦乳パイズリ、下乳パイズリ、馬乗りパイズリ、ノーハンドパイズリ、着衣パイズリ、パイズリフェラ、ベロチュウパイズリ……くらい?」
「二人にパイズリされたい」
射精したばかりなのに、彩世ちゃんと萌美ちゃんのパイズリを妄想して賢者タイムが吹き飛んでしまった。
「オプション制限がない場所でおじさんと再会できたらね」
迂遠に拒否された。ただノリがいい女の子たちなので、満更リップサービスだけとも思えない。
妄想寄稿『違法じゃありません、校則違反なだけです』後編へ