麻梨香を女性として意識したことはない。家が隣同士で幼なじみだったから、きょうだい同然か、あるいは親友以上家族未満みたいな存在だった。麻梨香が二次性徴を迎えた時は、そりゃ身体つきの変化は気になったけど、恋愛対象にすることはなかった。
けれど今、目の前で土下座されてエッチの予行練習を頼まれると、不意に異性として意識する感情が芽生えた。
「よく聴こえなかったんだけど?」
「今度の土曜日、智樹くんとデートする約束なの。行く場所も高校生じゃ普通じゃない所だから、ちょっと予習しておきたくって。こういうお願いできるの慶一しかいないし」
「そういうことって普通、練習しないもんじゃね?」
「智樹くんを喜ばせてあげられなかったら情けないじゃん」
智樹はおれの親友だ。陽キャラで運動神経も抜群なので、同じ属性の麻梨香とはベストカップルだと学校中で認識されている。部活を引退して伸ばし始めた髪がショートボブになりかかっている麻梨香。標準より少し大柄な体格が魅力だ。
「智樹も緊張して麻梨香の採点どころじゃないだろう。十八歳で成人なんだ、堂々とチェックインして、あとは成り行き任せだな」
「予習は拒否?」
麻梨香が不満げに顔を上げた。
「いや、満更やぶさかでもない」
「どっちよ!」
麻梨香が唇を尖らせたので、おれはお願いを承諾した。幼なじみを異性と認識してしまった気まぐれ。否、幼なじみゆえに低かったハードル。
「何をどう練習したいんだ?」
「キスと本番以外。ていうかフェラとパイズリとコンドームの着け方」
「おれには麻梨香を愛撫する権利はないわけだ」
「当たり前でしょ。セックスしたかったら慶一も早く彼女つくりなさいよ」
交際経験ゼロだ。もっとも、今時の男子高校生なので経験値ゼロでも劣等感はない。
麻梨香が制服のブラウスとキャミソールを脱いだ。パールブルーと白の縞柄ブラで色っぽさの欠片もない。新人グラドルの水着みたいだ。ただ谷間は寄せて上げなくても半開だった。ふくらみ始めからの成長を見守ってきたけど、はっきりサイズを聞いたことがない。
「何カップあんの、麻梨香のおっぱい」
「トップとアンダーの差が22cm」
「わかんねーよ!」
「あとでネットで調べればいい。ヒントはアルファベットで六番目」
それ答えじゃんか。
麻梨香が背中に手を回してブラのホックを外した。惜しげもなくカップが捲られてみると、釣鐘型の巨乳が露わになった。体育や部活の時にたぷんたぷん揺らし、男子の視線を浴びていた正体がこれか。乳輪がくすんだ桜色で少し大きい。
「スカートも脱いでください」
「フェラとパイズリに関係ないじゃん。今度は慶一が脱ぐ番」
麻梨香に睨まれて、おれはベッドに腰掛けてズボンとトランクスを脱いだ。
愚息が半勃起している。幼い頃に一緒にお風呂に入った時は、互いの身体に微塵も違和感を覚えなかったのに。
麻梨香がおれの股座に正座して股間を見つめた。麻梨香の成長に驚いたように、彼女もまたおれの成長に驚いていた。もう包茎じゃないし、精子だって出せる。
「思ったより立派かも」
「麻梨香に褒められるとちょっと自信が湧く」
羞恥心は覚えない。おれは上着まで脱いで素っ裸になった。
「何センチあるの?」
「男はち○ぽサイズなんて測んないの」
「自分の身体なんだもん、ちゃんとサイズくらい把握しときなさいよ」
「麻梨香のブラ選びとはわけが違うんだよ」
そうこう言う間に、幼なじみの巨乳でフル勃起してしまった。ムクムクと鎌首をもたげる肉棒に麻梨香の目が釘付けになる。
「私が測ってあげる」
と立ち上がった麻梨香が、机の抽斗をがさごそと漁ってメジャーを手に取った。そして愚息の根元から先端までをあてがって計測する。
「えっと……15cm。これって大きいの?」
「お前こそネットで勃起の平均サイズをググれ。これがま○こに入るんだぞ。智樹のがもっとでかかったらどうする」
「壊れちゃう」
真っ赤な頬っぺたを押さえて、麻梨香がシュルシュルとメジャーを収納した。
「コンドーム着けてみる」
「いきなりかよ」
「さっきドラッグストアで買ってきたの。店員さんオススメのやつ」
麻梨香がバッグからコンドームのケースを取り出した。虹色のバタフライがプリントされた桜色のパッケージ。女の子が用意するのにぴったりだ。
「制服姿でよく売ってくれたな」
「生徒手帳で年齢確認されたけど。『安全第一よ』って店員さんが励ましてくれた」
「避妊具なら智樹が用意するかラブホに常備してあるのに」
「そうなの?」
「……いや、常備してあるかは知らないけど、智樹がその気なら用意するだろ」
ネットでラブホの使い方を検索したことがあった。アメニティの一環としてコンドームを常備しているらしい。個数は必要最低限っぽいが。
「どうやっておちん○んに被せるの?」
「封を開けてゴムを取り出せ。べとべとするのは潤滑剤のせいだ」
麻梨香が個包装のひとつを裂いて中身を取り出した。厚い外輪に薄い内輪が囲まれている。潤滑剤や殺精子剤で見るからにてかっていた。中心にちょん、とふくらんでいるのはいわゆる精子溜まりだ。
「これをどうするの?」
「ち○ぽに被せて根元まで包め。丁寧にやらないとうまく嵌められない……らしい」
「どっちが裏表かわかんないってば」
麻梨香がコンドームをひっくり返しては構造を確認した。
「そっちじゃない、逆だ。精子溜まりを上にして被せるんだ」
麻梨香がコンドームをフル勃起に被せた。カリ首にひっかかって手間取ったのは、初体験ゆえのあるあるだろう。ただ麻梨香が遠慮なく愚息を握ってくるので、くすぐったくてもっと勃起してしまった。
「薄いよ。いっぱい精子出たら破裂しそう」
「日本の工業力を甘く見るな。ミリ単位の精巧さが売りなんだ」
コンドームを嵌めるだけで終了――という状況を情けなく思った時、不意に部屋のドアが開いた。
「お兄ちゃん、数学の宿題なん……あっ! お邪魔しました」
妹の椎名が顔を真っ赤にしてドアを閉めようとした。C学三年生にはかなり強烈な光景だったに違いない。
「待て。誤解するな」
椎名が目を伏せながら部屋に入り直してきた。
麻梨香が今の状況を説明する。麻梨香と椎名は、それこそ本当の姉妹みたいに仲良く、一緒に買い物に出掛けたり、週末に二人だけのパジャマ・パーティを開いたりしていた。麻梨香にとって椎名は守ってあげたい存在であり、椎名にとって麻梨香はなんでも相談できる女の子の先輩だ。
「……なんだ、そうだったのか」
安堵したように椎名が溜息をついた。前戯の最中だったと早とちりしたらしい。
それにしても我ながらの開き直り。コンドームを被せたフル勃起を妹に見られても、隠す気がさらさら起きない。むしろお兄ぃのありようを公開できて清々しいくらいだ。
麻梨香に手招かれて椎名がおれの前に正座した。カントリースタイルに結ったツインテールとあどけない顔立ち、そしてスポブラで保護可能なバストは麻梨香と正反対だ。
「椎名ちゃんも一緒に練習しよ」
と麻梨香が誘った。
「お兄ちゃんのおちん○んを触るの?」
「それだけはやめれ。実の妹の練習台になるとかインモラルすぎる」
「椎名ちゃんもいつか彼氏ができるんだよ。今のうちに予習しておくと得かも」
う〜ん……と唸っていた椎名がやがてうなずいた。
被せていたコンドームを外して、麻梨香がまた個包装をケースから取り出した。
受け取った椎名がトライ・アンド・エラーしながらフル勃起に装着する。
妹の手がこんなに優しいとは知らなかった。ぴくぴくと脈打つ肉棒に驚きおもしろがりながら、椎名が初めての避妊具装着に成功した。
「精子出してもほんとに破れないの?」
怪訝そうな椎名。
「破れない。0.01mmの頑丈さを信じろ」
「じゃあ精子出してみて。破れて妊娠するのイヤだもん」
妹に射精シーンを見せろと? 属性がうずくオーダーじゃないか。
おれは肉棒を握って擦りはじめた。幼なじみと妹にセンズリ鑑賞されるのは初めての経験だ。しかもコンドームを着用してのフェチな行為。目の前には牛みたいな巨乳とS学生並みのちっぱいがある。
「椎名もおっぱい見せろ。おかずにする」
「ちっちゃいから恥ずかしい」
「笑わないって。麻梨香がでかすぎるんだよ」
「Fカップくらい、今時の女子高生で普通にいるんだけど」
二人はパジャマ・パーティで見せっこしたことがあるのか照れることはなかった。椎名がパーカーとスポブラを脱いでちっぱいを披露すると、メジャーで測る気もしないトリプルAが視認できた。バスルームで曇りガラス越しに見えた正体がこれか。わずかにふくらんでいる乳房に未発達の乳輪が載っている。
「出る」
と、数分後、おれは擦る速度を上げて一気に射精した。
精子溜まりが一瞬でふくらむ。破裂しそうなのに0.01mmはすべてを受け止めた。
「いっぱい出た」
椎名が瞳を拡げた。
「すごい気持ちよかったっぽい」
麻梨香が拍手する。
余韻に浸りたがるフル勃起から麻梨香がコンドームを外した。しぼんだ水風船みたいに精液が溜まっている。初めて見る精子に麻梨香と椎名が興味津々だった。今度から、オ○ニーしたくなったら麻梨香か椎名に観てもらおう。
「……おい。練習台で遊ぶな」
萎える気配のない肉棒を不思議がり、麻梨香と椎名が弄んだ。
二人して握っては硬さを寸評する。陰嚢から亀頭までをパノラマで眺める。ふうっと息を吹きかけては肉棒をピクつかせて笑った。
「次はどっちの練習だ。おれはフェラでもパイズリでもいい」
麻梨香と椎名が相談してフェラチオ練習に決まった。じゃんけんして麻梨香が先行、椎名が後攻だ。初フェラが幼なじみとかエロゲーかよ。
「ただ舐めればいいんでしょ? ソフトクリームを食べる時みたいに」
「咥える時はがりって歯を立てるなよ。ち○ぽはけっこうナイーブなんだ」
「わかってるってば」
おれの股座に座り直して、麻梨香がフル勃起を握った。そしてリハーサルみたいにちょっとだけ棹の裏を舐める。ぬるぬるした舌感がくすぐったかった。
「……けっこう気持ちいい」
「んふ、慶一に褒められると嬉しい」
幼なじみの表情が真剣になり、肉棒を愛撫し続けた。ソフトクリームを舐め取るように舌を動かし、棹の裏を単調にくすぐる。ただそれゆえ変化に乏しかった。愚息に伝わる快感が一定でしかない。
「裏筋とかカリ首とかも舐めないと飽きられるぞ」
「どこそれ」
麻梨香が尋ねてきたので、おれはち○ぽのパーツを細かく説明した。椎名がメモを取りそうな眼差しで予習していた。童貞に膣口やクリトリスの位置を説明するようなものだ。
「男によって責められたい箇所が違うんだ。智樹の弱点を発見できたら好感度急上昇だな」
「慶一の弱点はどこなの?」
「探してみろ」
おれ自身、フェラが初体験なので自分の弱点がどこなのか認識していない。ただ棹の裏ではなさそうだった。麻梨香に何度舐められても射精欲がうずかないのだ。
麻梨香が宝探しするように愚息を点検し始めた。裏筋、カリ首、尿道口、亀頭の扁平部分を順番にくすぐっては反応を窺う。
「あ、ここ?」
おれがもっとものけぞったのはカリ首の溝だった。
「ヤバいからやめれ」
「ここなんだ」
麻梨香が集中的にそこを責めた。愚息を無理やり水平にし、カリ首に沿って溝をなぞる。舌先を蛇みたいに小刻みに動かしたり、執拗なほど丁寧に舐め取ったり。たった数分の予行練習でベロの使い方を会得してしまったようだ。
「私もやりたい」
と椎名が手を挙げた。
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