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妄想寄稿『間もなく電車で発射致します』 Angel Heart 25/1/31(金) 8:15 小説

Extra Episode『ユーノーの祝福』 Angel Heart 25/1/31(金) 17:38 小説
Re:Extra Episode『ユーノーの祝福』 純西別森木 25/1/31(金) 18:04
Extra Episode『ユーノーの祝福 半分この帰り道』 Angel Heart 25/2/14(金) 18:26 小説
Re:Extra Episode『ユーノーの祝福 半分この帰り道』 純西別森木 25/2/14(金) 19:41

Extra Episode『ユーノーの祝福』 小説  Angel Heart  - 25/1/31(金) 17:38 -

 昔々、故郷に恋人がいると兵士たちの士気が下がり戦争に勝てなくなると考え、婚姻を禁止したローマ帝国皇帝がいました。
 婚姻を禁止されて嘆き悲しむ彼ら兵士を憐れに思い、こっそり結婚式を挙げていたのがキリスト教の司祭ヴァレンティヌス(バレンタイン)です。
 ヴァレンティヌスの行いはやがて皇帝の耳に入り、やめるよう命令されましたが、毅然として拒否したため、ついにヴァレンティヌスは処刑されたのでした。その日はちょうど家族と結婚の女神ユーノーの祝日(2月14日)にあたる日で、一説には時の皇帝クラウディウスが意図的に、当てつけの意味合いで選んだとされています。

               ***

「ふうん……バレンタインって司祭の名前だったのか」
 キッチンに置いたタブレットでバレンタインの由来をググると、おれは独りごちた。年に一度だけのイベントなので、いつか調べようと思いつつも忘れていたのだ。
 広いキッチンルームにはおれと妹の花凛だけだ。エプロン姿でチョコレート作りに挑もうとしている。たまには贈りたい相手と一緒に作ってみたいと花凛に誘われたのだ。
 ちなみに花凛は八歳下の高校二年生。母親の再婚でできた初めての妹だ。ポジティブな性格で無邪気なので、振り回されること傍迷惑だけど、一緒にいて楽しいのは事実だった。
「感心してないで早く調べてよ」
 花凛が急かす。バレンタインチョコのレシピを確認するつもりが横道に逸れ、ヴァレンティヌスのエピソードにうなずいていた次第だ。
「市販のチョコを溶かして成型し直す程度だからレシピとか要らなくね?」
「わかってないな。手間暇かけるから想いが伝わるんじゃない」
「貰う側としては手作りでも市販品でも大差ないんだけど。チョコレートを贈りたい相手、っていう存在意義だけで充分満足なんだぞ」
 よくクリスマスやバレンタインを呪って僻(ひが)む人達がいるけれど、ネガティブにならなくていいと思う。誰かが幸せになれればそれでいいじゃないか。世の中が鬱屈した空気に包まれるより余程ましだ。

 花凛と一緒にチョコレート作りに難儀した。
 成型するだけだと思ったら、やれメレンゲを作れだの牛乳が何mlだのと指示がうるさい。しかも花凛がうっかりココアパウダーを買い忘れていたので慌ててコンビニに車を走らせる始末だった。友チョコをラップに包み終えた時には深夜一時を回っていた。
「……お前、友達多すぎ。いったい何個友チョコ作ったんだよ」
「五十個。クラスのみんなと部活の先輩と後輩でしょ。あと葛西彩世ちゃんと結城萌美ちゃん、丹羽眞理子さんに瀬名香織ちゃん、それに真衣菜ちゃんと莉子ちゃんもいる」
 誰だよ。
「ブランデーボンボンはおれと父さん用の義理チョコだってのはわかるけど、このでっかいハートマーク型の本命チョコは誰に渡すんだ?」
「えへへ……内緒」
 意中の男子がいるのだろう。そういえば一緒に暮しはじめて半年経つけど、花凛と突っ込んだ恋バナをしたことはなかった。
「教えてくれ。ちょっとお兄ぃの部屋に行こう」
 余ったブランデーとチョコを持って花凛を連れ出した。

 ――スマホで撮影した画像を見て、妹の想いを受け止めてくれる素敵な男の子だと思った。どこでどうやってチョコを手渡すのか尋ねようとしたけれど、チョコ作りですっかり疲れた妹は、もうベッドに横たわってスヤスヤと寝息を立てていた。


                  Extra Episode2『ユーノーの祝福』

    (2月14日、閲覧者の皆さんにユーノーの祝福がありますように)

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Re:Extra Episode『ユーノーの祝福』  純西別森木  - 25/1/31(金) 18:04 -

どうせなら、ご褒美にハグしてほしかったですね。手伝ったから。ところで、25歳の男に葛西彩世ちゃんと結城萌美ちゃんが左右から密着して頬にキスしたり、爆乳で顔を埋めたり抱きついて顔をこすりつける話書いてほしいです。

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Extra Episode『ユーノーの祝福 半分この... 小説  Angel Heart  - 25/2/14(金) 18:26 -

 朝から男子がそわそわしている。特別な行事のないありふれた登校日だけれど、世の中的にはバレンタインデーなのだ。もしかして女子からチョコをもらえるかも……と、みんな無関心を装いつつ期待感を漂わせていた。
 ボクも登校するなり机の中を確認してみたけど、残念ながらチョコを忍ばせてくれた女の子はいなかった。もらえることが確実な彼女持ちは余裕をかましている。女子がどんどん登校してくると、教室や廊下で友チョコの交換が始まった。

「……誠くん。頼んでた本が入荷したから陳列とポップ作り手伝ってくれる?」
 と、結局、友チョコのおこぼれにすらあずかれないまま帰り支度をしていると、愛梨先輩が声をかけてきた。図書委員会の委員長だ。本好きのボクは一年生から司書を務めていた。
「すぐ行きます」
「みんな帰っちゃって人手が足りないの。私も用事を済ませたら図書室に行くから」
 クスっと微笑んだ愛梨先輩の笑顔になにか企みを感じた。
 けれど鈍感なボクは、単なる書架整理じゃないな……と確信するには経験値が足りなかった。

 図書室には花凛ちゃんがいた。選択授業の音楽で一緒になる図書委員仲間だ。
 肩まで伸びたセミロングはいつもさらさらで、時々結い上げていたりカチューシャを着けていたりすると、あどけない顔立ちが際立ってときめいてしまう。はっきり言って気になる女の子だった。好きな小説のジャンルがSFとティーンズラブ(TL)と共通しているのも嬉しかった。
「誠くん」
「花凛ちゃんひとりで書架整理してたの? ポップ作り大変じゃん」
「…………」
「新入荷した本どこ?」
 辺りを見回しても段ボールもなにもない。ていうかポップ作りのための色ペンも画用紙もなかった。
「騙してごめん。誠くんを一人で呼びたくて嘘ついたの。愛梨先輩に協力してもらった」
「…………」
「好きです。私と付き合ってください」
 頭を下げられて、顔を真っ赤に染められて大きなラッピングを差し出された。
 問い返すのは野暮でしかない。バレンタインチョコでしかありえないのだ。
「あ、あ、えっと……じゃあお願いします」
 数秒迷った末、ボクは手作りチョコを受け取ってお辞儀した。
 なんか卒業証書の授与式みたいだね、と花凛ちゃんがボケると二人で笑った。

 ……帰り道、駅前のコーヒーショップに寄って初めてのデートを経験した。
 テーブル席の向こうに見えるのは粉雪の舞踏会。世界中が幸福に包まれているような温かさを感じた。
「ここでチョコ食べていいのかな?」
「だめ。恥ずかしい」
「大きすぎて一日じゃ食べきれないんだけど」
「お兄ちゃんが、作る時にグラム(g)を量り間違ったから……!」
「じゃあ半分こ。ココアに入れても美味しいと思うよ」
 花凛ちゃんを大切にしようと思った。
 バレンタインやクリスマスに僻(ひが)まなくていい。


              妄想寄稿『ユーノーの祝福 半分この帰り道』

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Re:Extra Episode『ユーノーの祝福 半分こ...  純西別森木  - 25/2/14(金) 19:41 -

花凛ちゃん、成就して良かったと思うし、みんなで愛は勝つを熱唱して祝福したいですね。
尚、フラれたら祭りのあと(桑田佳祐)をみんなで熱唱して慰めるつもりだったけどね。

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