昔々、海沿いの村にうらすじ太郎という若者が住んでおりました。
ある日、太郎が浜辺へ釣りに出掛けると、女童が数人、ウミガメを棒切れで叩いたり罵ったりしてイジめています
「やい、のろま。なんで陸へあがってきた」
「そうじゃそうじゃ」
「甲羅に引っ込んでないで顔を出せ」
ウミガメは前足で顔を覆って涙目になっています。
太郎は助けに入りました。
「これこれ、狼藉を働いてはウミガメが可哀想じゃないか。海へ帰してやりなさい」
「イヤじゃ。うちらが見つけたんだから好きなようにする」
「海へ帰してあげたら代わりに珍しい亀を見せてあげるよ」
太郎の言葉に女童たちはすっかりウミガメから興味を失い、海へ放ってやったのでした。
「こっちへおいで」
と、太郎は女童たちを岩場の陰に連れ込みます。
「珍しい亀はどこじゃ。なんもおらん」
「これだよ」
と、太郎はおもむろに下ばきを脱いで性器を見せました。それはそれは立派な逸物です。
「……わ。ほんとに珍しい亀じゃ。お前が飼ってるのか」
「触られたり舐められたりするともっと首をもたげるんだ」
女童たちは誑(たぶら)かされるまま肉棒を握ったり順番に舐めたりしました。
一斉に顔を寄せ合ってちろちろれろれろと亀頭をくすぐられると、太郎は我慢できずに発射してしまったのでした。
「顔にかかった! 亀の仕返しだ!」
「栗の花臭い! 白くてどろどろする!」
逃げ帰る女童たちの背中を見ながら、太郎は腰砕けになったのでした。
「……太郎さん、太郎さん」
翌日。太郎が岩場に座って釣り糸を垂れていると、昨日のウミガメが水面から顔を覗かせました。
「ああウミガメさん。昨日は大丈夫でしたか?」
「おかげさまで命拾いしました。お礼に竜宮城へ招きたいと思いますので、どうぞ私の背中へ乗ってください」
「竜宮城というと、あの海の底にあるという桃源郷のことですか?」
「はい。都市伝説ではございません」
太郎はウミガメの背中にまたがりました。ざぶんと海中へもぐった時には息を止めたのですが、しばらくして呼吸しても窒息することはありません。マリンブルーの海中では熱帯魚やサメがのんびりと漂い、こんぶやわかめがゆらゆらと揺れています。
「こちらでございます」
と、ウミガメが太郎を水底へ降ろしました。
――SEA PALACE【竜宮】
御殿を海底に設(しつら)えたような趣です。大きな門扉の前にはシーサーペントが三又鉾(トライデント)を持って警備にあたり、来客のボディチェックをしています。無下に追い返されたのは半魚人の未成年でしょうか。
「乙姫様のVIPなので失礼のないように」
ウミガメがシーサーペントに命令しました。
「ウミガメさんの命を救っていただいたうらすじ太郎様ですね」
「太郎様のリクエストには滞りなく応じるよう計らいなさい」
「畏まりました」
「ウミガメさんはご一緒なさらないのですか?」
太郎が訊きました。
「私は小用があって出掛けねばなりません。どうぞ心ゆくまでお寛ぎください」
そう言って慇懃に頭を垂れると、ウミガメは去って行ったのでした。
「一名様ご案内。乙姫様のご来賓、うらすじ太郎様」
シーサーペントがインカムでホールスタッフに伝えました。
清涼殿を模したような広い場内は酔客であふれ、水着姿の天女が給仕をしています。
ドンペリ・ロゼを浴びるように飲んでいるのは財宝を探し当てた海賊でしょうか。葛西彩世ちゃんと結城萌美ちゃんに左右からチュッチュッと頬にキスされ、爆乳に顔を埋められて恍惚としているのは25歳の男でしょう。リクエストはもうお腹いっぱいです。
「いらっしゃいませ」
太郎がVIPルームに着くと間もなく、羽衣をまとった超絶美人と半裸の人魚が二人、チャームを運んできました。三人とも巨乳です。
「乙姫様ですか」
「宮殿オーナー兼キャストリーダーの乙姫と申します。このたびはウミガメさんの窮地をお救いいただきありがとうございました。ささやかではありますが、お礼に太郎様をおもてなししたいと存じますので、どうぞ心ゆくまでお楽しみください」
そしてぱんぱんっ、と乙姫が両手を叩くと天女たちが次々とご馳走を運んできたのでした。
海の桃源郷ならではの珍味、天女が船器となった女体盛り、そしてミシュラン三つ星の竜宮御膳です。幻の和酒や焼酎、舶来品のぶどう酒や蒸留酒もどんどん運ばれてきました。
「三人ともおっぱい大きいですね」
酔いが重なるうち、太郎の箍(たが)が外れて下心が露わになってきました。
「私がHカップで人魚たちがFカップです。成育までそっくりなんて嘘みたいですよね」
人魚は双子なのでした。
「……急に音楽が変わりましたね」
静かに流れていた雅楽が止み、艶やかなムード曲になりました。それだけでなく、照明も一変し、宮中が色めいたミラーボールに包まれたのです。
「ダウンタイムです。一時間に一度、十分間のお触りタイムがあって女の子の身体を触れるんです。下のほうは指二本まで、本番行為の強要は即退店・出禁処分です。あんまりお痛が過ぎると本気でシーサーペントさんに刺されますからね」
「海にも遊郭があるとは知りませんでした」
「太郎さんはけれど賓客なので特別枠です。ヌキも大丈夫ですよ」
微笑むと乙姫が太郎の膝にまたがり、いわゆるだいしゅきホールドにしました。
花魁衣装の袖口から手を忍ばせてみると、下着を着けておらず生おっぱいです。乙姫のふくらみは太郎の手のひらに余り、まるで搗きたての鏡餅のような揉み心地でした。
太郎は乙姫と蕩けるような接吻を交わして舌を絡め合いました。
双子の人魚たちも太郎の唇を奪い合います。自ら貝殻ブラを脱ぎ去って生おっぱいを晒し、太郎に揉ませました。
場内の方々からやるせない喘ぎ声が聞こえてきます。
太郎は乙姫と人魚たちに身を委ねて下ばきを脱ぎ、見事な強張りを披露しました。
「谷間に挟めそうですね」
「得意ですよ」
乙姫が太郎の股座にしゃがみ込み、肉棒をいとも簡単に挟み込みました。そして太郎の反応を窺うように上目遣いになりながら、乳房を上下に揺らし、交互に揺すって、時に射精を我慢させるように動きを止める愛撫を繰り返したのでした。
「――極楽です。浄土は乙姫様の谷間にあったのですね」
「お悦びいだだけたようで何よりです」
双子の人魚が乙姫と入れ替わって愛撫を続けました。形も柔らかさも瓜二つの美巨乳に左右から強張りを挟まれると、太郎は恍惚と天を仰ぐのでした。
乙姫が双子おっぱいから顔を覗かせる亀頭をれろれろと舐めまわします。
あまりの快楽に太郎は放ってしまいました。もう死んでもこの世に思い残すことがないくらいの満足感に全身を震わせたのです。
けれど太郎は賓客扱いです。フリー客や常連客のような時間制限がありません。ダウンタイムが終われば再び会話を楽しみ、雅楽が切り替わればまたお触りに突入したのでした。
寝床では乙姫と人魚たちが添い寝してくれました。
夜が明ければ迎え酒から酒宴に至り、果てしなく人生を謳歌した次第です。
……そんな桃源郷生活がしばらく続いた後、太郎はふと地上での生活を思い出しました。
(お父やお母が心配してるんじゃないだろうか。女童たちは元気だろうか)
不安と懐かしさに心を占められた太郎はついに乙姫に申し出ました。
「ずいぶん長い間お邪魔致しましたが、地上には私が愛する人達がおります。この辺で竜宮城とお別れしたいのですが」
「然様ですか。残念ですが、太郎様を無理にお引き留めするわけにも参りません。どうかお達者で」
ウミガメの背中にまたがった太郎に乙姫が包み箱を渡しました。
「お土産の玉手箱でございます。ですが決して開けてはなりません」
「乙姫様のお申しつけに従うように致しましょう」
地上の生活に想いを馳せていた太郎は戒めの矛盾に気がつきませんでした。
――開けてはいけない玉手箱をなぜ贈る必要があるのでしょう?
ウミガメの背中に乗って太郎は陽光差し込む水面へと浮上したのでした。
浜辺の風景が一変していました。
のんびり釣りができた場所が騒がしいリゾートに生まれ変わっています。双子の人魚も青ざめる美女たちが谷間を晒しながら歩いていました。波乗りに興じるのは都市伝説だと思っていたリア充でしょうか。
太郎はあまりのカルチャーショックに生きる希望を失ってしまいました。ビキニ姿ではしゃぐ女童に話を聞いてみると、なんと太郎がウミガメを助けた時から五百年近くも経っていたのです。
(ここでは暮らせん……私が知っている人達はとうの昔に死んでしまったのか)
自暴自棄になった太郎が玉手箱を開けてみると、追い打ちをかけるような紙切れが入っていました。
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【うらすじ太郎様】
¥1,000,000両也(遊興費として)
SEA PALACE 竜宮
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(……ぼったくりかよ――泣)
おふざけお伽噺『うらすじ太郎』END