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妄想寄稿『矜持衝突 懲罰と友情と』 小説  Angel Heart  - 20/5/15(金) 16:36 -

 午前八時二分発《総合バスターミナル行き》のバスに乗るのが亜香里の日常だった。
 終点ひとつ手前の停留所で降りるまで四十分ほどバスに揺られ、その後、徒歩でショッピングモールへと向かう。ファッションデザイナーになる夢は結局叶えられなかったが、かわりに下着店のショップ店員という天職を見つけたのだ。接客する相手はおもに小学校高学年から高校生まで。初めてのブラ選びに戸惑ったり、友達の誰よりもかわいいインナーを探しに来たりした女の子の相談に乗るのだ。応対が親切だからか、それとも亜香里が美人だからか、彼女は店員の中でも特に人気を集めていた。二十六歳にしてたくさんの妹ができた気分だ。

 ただひとつ気に喰わないことがあった。バスに乗車するのが朝のラッシュ時のため、車両はいつもたくさんの乗客でごった返しているのだ。しかも《プライド女学院大学附属高校》の女子生徒ばかり。経路に学校があるので仕方ないが、車両はほぼ通学バス状態だった。
 ……べつに混んでいて座れないのが気に喰わないのではない。マナーの悪さにうんざりさせられるのだ。
 大声で騒ぐ、平気でスマホで通話する、優先席を占領する、化粧を始める――。いったいどんな教育を受ければこんな人間に育つのか呆れてしまう。
 今日も今日で大騒ぎだった。他愛のないガールズトークに哄笑し、LINEやSNSに夢中になり、コンビニのおにぎりを頬張りだす。一人掛けのシートに座る中年男性が気まずそうに身を縮めていた。
(馬鹿は治んないのかしら……?)
 人混みを掻きわけて進み、亜香里は車輌中央部で吊革に掴まった。夏場なのでデオドラントの香りも立ち込めている。ストレスだ。ショップに来る女の子たちのにおいは可愛らしく思えるのに。

 やがて亜香里の目にひとりの女子生徒の姿が留まった。すぐ前方で吊革に掴まっているショートヘアの女の子だ。友達数人と恋愛話に花を咲かせているが、主導権を握りたがる口振りからリーダーを気取っているらしい。身体にも自信があるようでたびたびバストサイズを自慢してくる。厭味にならない程度に。
(Eカップで有頂天になってるとか笑えるわ……)
 心の底で亜香里は嘲った。亜香里はGカップある。来店する女の子たちの憧れだ。特別に触らせて驚いてもらったり、巨乳のメリット・デメリットを教えてあげたりもする。もっとも、高校生でEカップもあれば自慢したくなる気持ちもわからなくはないけれど。
 ……停留所で乗降があって人混みの様相が変わった。友達とはぐれてしまったショートヘアの女の子が亜香里と真正面から向き合う。
「あ……すいません」
 思わずぶつかってしまった女の子が亜香里に頭をさげた。
「大丈夫よ」
 恋愛話から漏れ聞こえた名前では優希ちゃんだ。

 優希が亜香里のバストを視界に捉えて驚いた。大人の巨乳を見て怯んだのだろう。自分はこんなおっぱいの傍でEカップを自慢してたのか、と。
「それAngel Heartブランドのブラ?」
 と亜香里は優希の夏服から透けるシルエットを見ながらつぶやいた。
「あ、はい……先輩に奨められて先週買ったばっかりで」
「Eカップだっけ、優希ちゃんのおっぱいって? お話聞こえちゃった」
「…………」
「でもね、あんまり自慢してるとターゲットにされちゃうよ。痴漢とかストーカーなんかじゃなくって、私みたいな乳比べの戦士に」
 やおら亜香里が優希のEカップに向かい、Gカップを押しつけた。
 喧騒にあふれる車内は密かに乳バトルが始まったことを知らない。
「ちょ……やめてください。何でくっつけてくるんですか」
「自慢のおっぱいなんでしょ? 嫌がってないで反撃してきたら? それとも優希ちゃんのEカップは自己満足するだけの貧乳なの?」
 優希の顔がひきつった。乳道(ちちどう)のちの字も知らないみたいだが、自尊心が挑発されたのは確かだ。「でかいだけで調子に乗らないでください」とバストを押し返してきたのだ。

 車窓に風景が流れる中で大人と女子高生の巨乳がぶつかり合う。
 亜香里のGカップが圧倒的なボリュームに物を言わせて押しつぶすと、優希のEカップが成長期ゆえの張りを盾にして防御した。ブラウスが密着しあって皺が寄る。ふくらみがひしゃげ、ブラジャーがずれ始める。
 ……けれどしょせんはプロと素人の闘いだ。一、二分もすると優希が防戦一方になり、買ったばかりのブラジャーを惨めにゆがめた。今にも泣きそうな顔になりながら。
 亜香里はとどめとばかりに押しきった。優希が降参して首を横に振る。
「友達とお喋りもいいけどマナーは守って。そうすればこんなお仕置きしないよ」
 はいわかりました、と優希が小さくうなずいた。

                ***

 亜香里が陳列棚を整頓していると指名が入った。女子高生が採寸とブラ選びをお願いしたいのだという。亜香里には日常茶飯のことなので快く了解した。
 カウンターの前で立っていたのはツインテールの女の子だった。お嬢様っぽい風貌で思わず立ち止まってしまう美少女だ。《プライド女学院大学附属高校》の制服を着ているけれど、バス連中のようながさつさがない。ああこういう生徒もいるんだ、と亜香里は少し見直した。
「初対面なのにいきなり指名してすみません。友達が『亜香里さんていう店員さんがいいよ』って教えてくれたんで」
「採寸とブラ選びだっけ? 最近バストサイズ測ったのはいつ?」
「春の身体測定の時です」
「何センチだった?」
「86センチです」
 アンダーを測ってみなくとも亜香里には目測でカップサイズがわかった。細身なのでFカップだろう。童顔巨乳のアンバランスさ。グラドル事務所からスカウトされた経験もあるに違いない。
「じゃあ今のサイズを採寸してみるから試着室に行こっか」
 事務的な口調にならないのが人気を集める秘訣だ。

 店舗の奥にある試着室に入ると亜香里は脱衣をうながした。ポケットからメジャーを取り出して着替えを見守る。名前を尋ねると美織ちゃんといった。
「気をつけしてればいいですか」
 上半身裸になった美織が言う。お椀型の巨乳が色白に輝いている。
「うん。ちょっとだけ脇を空けてくれれば」
 亜香里は手際よくメジャーを回してバストサイズを測った。思ったとおり86センチのFカップだ。発育もルックスもいいとなると世の不公平を感じる。
「店員さんもおっぱい大きいですよね」
「……え?」
「何カップあるんですか。知りたいです」
 唐突な質問に亜香里は戸惑った。何十回ともなく女の子にカップサイズを訊かれた経験はあるが、美織の言葉にはどこか棘があったのだ。
「Gカップだよ?」
「じゃあ私よりひとつ上だ。あの……店員さんとブラジャー交換してみたいです。店員さんのブラ、着けさせてもらっていいですか」
 乳道を知っている。亜香里の全身に緊張感が走った。でなければブラジャー交換などという言葉を知っているはずがない。
 ――ハ! まさかこのコって!
「気づきました? 今朝はよくも優希ちゃんを泣かせてくれましたね。私の大切な後輩なんですけど? 乳道知らない女子高生にちょっとやりすぎじゃないですか」
 敵討ちに来たのだ。自分がここで働いていることは女の子たちの常識だ。

「変な先輩風吹かせると痛い目に遭うよ。美織ちゃんより戦闘経験豊富なんだもの、私」
「脅しでブラジャー交換回避ですか。自信ないんですね。あたしに嘲弄されるのそんなに怖いんですか」
 三畳もない試着室で火花が散りあう。他の客は勝負の開始など知りようもない。
「怖いわけないでしょう。お子様ブラなんて練習にもならないわ」
 亜香里はスタッフウェアを脱ぐとブラジャーを外した。亜香里のGカップもお椀型だ。ふたりのバストに差があるとすれば、単純なカップサイズの差だけだろうか。
 視線を交差させてブラジャーを受け渡しあった。試着して優位を証明したほうが勝ちである。ホックを弾き飛ばしてもいいし、カップのきつさを罵ってもいい。
 亜香里が美織のブラジャーを着けると息苦しいほどにカップが締めつけてきた。スレンダーな身体にオーダーメイドされたブラは豊満な亜香里のバストにそぐわないのだ。ホックを留めて力を入れるとめきめきと留め金が軋みだした。
「店員さんのブラ緩いですね。太りすぎですよ」
 余裕のあるブラジャーを着け、美織が挑発する。86センチを包むカップには数ミリの余白ができていた。亜香里のほうが大きい証拠だ。ダイエットの必要性は否定できないが。
「美織ちゃんのブラ、もうすぐちぎれそうよ」
 亜香里がさらに力を入れるとホックが弾け飛んだ。だらしなく緩んだブラジャーからGカップのふくらみがこぼれ出る。

「緒戦に負けるのは想定の範囲内でしたけど」
「負け惜しみね。これ以上惨めにならないためにも早く帰ったら? 美織ちゃんが改心してくれるなら、お姉さん、これからも接客してあげていいんだけど」
 巨大なブラジャーがふたつ、試着室に転がっている。
「後輩の仇を取るまで帰れないですよ。ブラジャー交換に勝ったからって調子に乗らないでください」
 美織は少しも物怖じしていない。むしろウォーミングアップが終わったような顔でいる。
「後悔しても知らないわよ」
 亜香里が真正面から美織のFカップを鷲掴んだ。美織も負けじとGカップを掴み返す。愛撫ではないので優しさの欠片もない。たがいに掴み潰そうと揉みまくっている。
 亜香里の乳房がこねくり回され、大きめの乳輪が苦しそうにもがく。
 美織の美乳が圧縮されて、桜色の乳首が尖りだす。
 どちらも悶え声をあげない互角の闘いだ。

 揉み合いから自然と乳房同士の圧迫戦に移った。
 まず亜香里が美織の右乳房だけを押さえ、Gカップの谷間で挟み込んだ。おっぱいの、おっぱいによる、おっぱいのためのパイズリ。先制攻撃としては強烈だ。美織の顔に苦悶の色が浮かんだ。張りの強い巨乳ゆえに痛いのかもしれない。
「86センチってけっこう貧弱なのね。谷間に埋もれちゃったじゃない」
「年増の垂れパイを自慢するとか不憫になってくるんですけど」
「美織ちゃんと違って男も知ってるバストなの。……美織ちゃん、男性経験ないでしょ。挟んでみてすぐわかったわ」
 処女であることをなじられるのが沸点だったらしい。美織の全身からお嬢様オーラが消えた。仇を取りに来た先輩ではなく、もはやひとりの乳道戦士に変貌している。
「私の胸を揉めるのはそれなりの男だけなんで」
「――く!」
 美織が反撃に転じた。
 パイズリから逃れると亜香里のGカップに向かい、若さあふれるFカップを押しつけたのだ。張りと弾力が強いので亜香里のバストをなんなく押しつぶす。作用・反作用の法則にしたがって美織のバストもへこまされるが、ひしゃげ具合からすると明らかに亜香里のほうが劣勢になっている。
「貧弱な胸につぶされて情けないですね。降参したらどうですか」
「誰が女子高生相手なんかに……!」
「店員さん、自分より巨乳の女性と闘った経験ないでしょ。くっつけてみてすぐわかりましたよ。経験豊富だとか言って臆病なんですね、なんか可哀想になってきました」
「うるさいわね」
 渾身の力を込めて亜香里は押し返した。
 確かに、亜香里は自分より巨乳の女性と闘った経験がない。特に乳道の覇者を目指していたわけでもなく、勝負を挑んでくる女も偶然、Gカップ以下が多かっただけだから。

 だが目の前の女子高生は違っていた。敵討ちに来たのが目的だけれど、その瞳には乳道の覇者を目指す気概が宿っている。おそらく強敵に戦いを挑んでは負け、負けては戦闘スキルを磨いてきたことだろう。押しつけられてくるFカップに余裕がある。乳首を立たせようとしてくるテクニックに経験の差を感じる。
(……だからって負けないわ、こんな小娘に!)
 亜香里はありったけの力を総動員してつぶし返した。
 両手を組んでバストをぶつけ合うふたりの姿が試着室の鏡に映る。美織が少し後退して顔を歪めた。優希相手のように簡単にいかない状況に亜香里は焦る。
 圧迫戦からビンタ戦に移行し、遠心力を借りた乳房同士がたたき合う。――ばちんっ、ばちんっ、ばちぃぃん!
 そして再びの圧迫戦。美織が張りと弾力に物を言わせて速攻に出た。亜香里の体勢が整う前に一気に押し、姿見のほうへと追い込んだのだ。
 Gカップをひしゃげさせる美巨乳と鏡面に挟まれて亜香里は身動きできなくなる。痛くて、苦しくて、疲れ始めていた。
「わ、わかったわ……私の負けよ。美織ちゃんのほうが強い」
「聞こえないわ。もう一度言って」
「私の負けだってば……ゆ、優希ちゃんには酷いことした、もうしない」
「わかればいいの。経験豊富だとかもう自慢しないで」
 美織がFカップを離すと息苦しさから解放された。負けたショックに亜香里は呆然とする。
「これ……戦利品にもらっていくから。優希ちゃんきっと喜ぶと思う」
 試着室に転がっていた亜香里のブラジャーを手に取ると、美織が言った。
 そしてホックの弾け飛んだ自分のブラジャーをバッグにしまい込むと、ノーブラのまま夏服を着始めたのだった。
「あ、そうだ。明日学校休みだからさ、友達とか後輩連れてまたお店来るね。約束通り接客してよね、その負けパイで」
 亜香里はもうあのバスには乗れない。
 美織が悠然と試着室を出ていった――。

                        (Created by Angel Heart)

                ***

 立て続けの投稿ですが乳比べファンの皆様へ。
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Re(1):妄想寄稿『矜持衝突 懲罰と友情と』 矜持衝突ファン 20/5/15(金) 19:07
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