高2の初夏、高校最大のイベントとも言うべき修学旅行がやってきた。この地域では、高校の修学旅行の行き先は沖縄というのが定番だ。
「カナ、それはヤバいって。おっぱい収まってないし、そんなの見たら、男子たち、皆トイレ駆け込んでオナっちゃうよ」
「そう?でもこのデザイン可愛くない?」
修学旅行先の沖縄のビーチで着るための水着を選ぶため、親友のサキと一緒にデパートの水着売り場を訪れたカナだったが、Hカップというカナの巨乳を収めることのできる水着はなかなか見つからない。さんざん試着して、ようやくお気に入りの一着をゲットすることができた。
「だけど、ほんとカナっておっぱいデカいよね〜。羨ましいな〜」
私服に戻ったカナの胸元の膨らみに目をやりながらサキがつぶやく。
「いやいや、サキだって結構大きいじゃん」
確かにサキも女子高生というものさしでみれば十分に巨乳だ。目測でFカップはあるだろう。
しかし、世間で巨乳扱いされるサキに、自身のバストを羨まれることに、カナは一種の優越感を感じていた。
「あっ、そうそう。今度の修学旅行なんだけど、第一高校と日程が一緒って知ってた?
第一に行った中学の時の部活の友達とラインしてたら、同じ日じゃんってなったんだよね〜」
第一高校。その名前が出た瞬間、カナは急に身体がこわばるのを感じた。そう、その第一高校こそがレイコの通う高校だったからだ。
もしかしたら、修学旅行先であのレイコと再会してしまうかもしれない。中学時代の屈辱の記憶が甦りそうになる。
(いやいや、あれから3年も経ってるのに、いつまで引きずってんのよ。もしレイコに会ったら、今度はこのHカップでリベンジしてやるわ)
それでも心のどこかに小さなトゲが刺さったような気持ちを抱えたまま、とうとう修学旅行本番を迎えた。
カナの心配もむなしく、カナの高校とレイコの高校は出発日さえ同じだったものの、利用する飛行機の便も別で、観光ルートが異なるのか、沖縄についてからもまったく出くわすことはなかった。最初はどこか心配していたカナも、レイコのことなどすっかり忘れて、友人たちと修学旅行を満喫していた。