(時間を自由に操れるのはありがたいんだけど、どうも気になるんだよな、あの鳴瀬とかいう執事が言ってた言葉が――。ルクスリアの王だっけか? 全然聞いたことないぞ。どこの国の王なんだ??)
授業を終えたおれは、そのまま3Fにある自習室に足を運んでいた。
気になったルクスなんたらがどこの王なのか調べるためだ。広い自習室には生徒用に揃えた赤本や問題集、それに参考書がある。世界史の用語集でも見れば答えが分かるかと思っていた。なんなら、入試や学校情報を検索するために設置した端末でググってみてもいい。世の中には種々雑多なマニアや専門家がいるからすぐに分かるだろう。
(ユダはだいたい想像がつくんだけどな……。キリストを裏切ったあいつだろ。いや、もう一人いたな。確かヤコブの子でそいつもキリストの弟子で……ああ、もう。わけ分かんないぞ)
ぶつぶつと独り言をいいながらおれは世界史の参考書を漁った。
けれどどの本にもルクスリアという国は載っていなかった。
ユダは世界史よりむしろ倫理の参考書に多く登場し、キリストを裏切った13番目の使徒として解説されていた。
だからどうしたというのだ。最後の晩餐は円卓じゃないし、円卓って言ったらアーサー王伝説だろう。ランスロットとかトリスタンとかガラハッド卿とか――。
……そう言えば『Fate/Zero』のDVD BOXまだ買ってなかったな。ブリタニアの王って言ったらやっぱセイバーなんだよ。あの戦闘ドレス姿がかっこかわいいんだ。……いや、かわいさで比べるなら遠坂凛とイリヤも捨てがたい。甘えてみたいならアイリさんだけど。
などと自分でもなにを調べているのか分からなくなった時、おれは声を掛けられた。
つい最近、英語の非常勤講師として入社してきた白井優美(ゆうみ)先生だ。おっぱいも大きく性格も明るくて、男子どころか女子生徒にまで人気の女子大生だった。確か聖上女学院大学の2年生だと言っていた。
「先生もなにかお探し物ですか?」
「うん……世界史についてちょっとね。ルクスリアって国、どっかで聞いたことありません?」
「ルクスリア……ですか? さぁ……私、世界史は苦手だったんで」
「そうですか。文系の先生なら分かると思ったんだけどな」
おれは世界史の参考書を書棚に戻した。
「すいません、お役に立てなくて」
優美先生が小さく頭を下げた。ネームプレートをぶら下げたブラウスが宮間以上に盛り上がっている。
「優美先生はなにを?」
「入試の出題傾向とかちゃんと把握しておいてねって塾長さんに言われて――。生徒に勉強教えること以外にも結構やること多いんですね、この仕事って」
「だったらこの過去問集がいいよ。解説も丁寧だし、リスニング用のCDも付録でついてるから」
と、おれは何気なく一冊の問題集を取り出した。おれが新人の頃、やはり先輩講師から推薦された過去問集である。出題傾向や対策が詳しくまとめられていて、効率よく知識を得るためには最適な問題集だった。
「ありがとうございます。助かります」
優美先生が問題集を受け取った。こんな綺麗な女子大生と聖夜を過ごせたらどれくらい報われた気持ちになれるのだろう。もっとも、どうせ彼氏持ちなんだろうけど。
「クリスマスは誰と過ごす予定なんですか? 優美先生は」
「えっ……?」
と、不意の質問に巨乳女子大生が身構えた。あるいはナンパと勘違いしたのかも知れない。
「いや……さっき生徒にからかわれたんですよ。三十路になるのにぼっちクリスマスとかかわいそうだって言われて。余計なお世話ですよね、おれが誰とどんな聖夜を過ごそうが関係ないのに」
「――笑」
「なんで笑ってるんですか?」
「それ……もしかして遥香ちゃんのことじゃないですか? 聞きましたよ。先生が遊びに行くのにも飲みに行くのにもいつも独りだから『ぼっち』ってあだ名付けたって(笑)」
あの野郎。今度時間止めたら処女膜破ってやる。余計なこと吹き込みやがって。
「面白い女の子ですよね、遥香ちゃんって」
「口が悪いのがたまに瑕ですけどね。……で、先生のご予定は?」
「彼氏と一緒にディズニーランドに。ディズニーホテルの予約が奇跡的に取れたんです」
……やっぱりな。大体おれが目を付けた相手って9割方彼氏持ちなんだよ。美人ばっかり選ぶせいか大概がっかりさせられるんだ。肉食系みたいにナンパできる勇気があればそれでも寝取ってやるんだけど、あいにく、そんな甲斐性があれば『ぼっち』なんてあだ名はつけられてない。まったく、草食系の哀しい性(さが)だ。
「いいですね。パレード見て彼氏さんとプレゼント交換して、メルヘンホテルでディナーですか。理想のクリスマスですよ、それ」
(……んで朝までHしまくりなんだろ。こんな巨乳の女子大生を好き放題にできるなんて、なんて恵まれた男なんだ……くそっ)
「先生の方はどうなんですか? やっぱり『ぼっち』なんですか?」
優美先生が椅子に腰掛けた。広い自習室にはパテンションで区切られたブースが50席ほどある。テスト前は満員になるが、今は4〜5人ほどの生徒しかいなかった。
「残念ながら――。今年もコンビニのローストチキンと安ワイン片手に淋しくDVDを観る予定です」
「サンタさん、ぼっち先生ところにも来るといいですね(笑)」
優美先生が微笑んだ。独り身の男を慰めるような優しい目だが、一方で草食系を憐れんでいるような冷たい目でもあった。
おれは心なしか疎外された気分を感じた。
(……結局、優美先生も草食系を馬鹿にするリア充か)
がっくりきた。別にクリスマスを一緒に過ごして欲しいとは言わないが、せめて草食系に理解を持つ女性であって欲しかった。そうであってこそ一緒に働けて楽しいというものだ。
おれは無意識のうちに聖者の時計を動かしていた。『ぼっち』を憐れむ美人女子大生に草食系の鬱憤をぶつけたくなったのだ。
「……」
世界の時間が停止する。優美先生が止まり、シャーペンを走らせていた生徒達がメデューサに睨まれた。
(ごめんね、優美先生。どうせ家に来るならサンタさんじゃなくて先生がいいんだよ。おれ、アラサーなのに女の子と一緒にクリスマス過ごしたことないから)
と、椅子に座ったまま固まった美人女子大生の顎をくいっと上げ、宮間にやった時と同じようにいきなり唇を奪う。キス慣れした女子大生のリップは薄く大人の味がした。無理やり舌を絡めるとエロい感触が伝わってきた。吐息すら聞こえてきそうだった。
おれはブラウスを盛り上げるふくらみを真正面から鷲掴んでみた。宮間以上に気になっていた巨乳はやはり宮間以上に巨乳だった。
(でけっ……何カップあるんですか? これ)
「……」
(Fカップ? それともGカップ?)
時を封じられた女子大生は焦点の定まらない目でじっと虚空を見つめている。
おれは飽きるほどおっぱいを揉みまくり、それからブラウスのボタンを順番に外していった。
ごくり、と一つ大きく生唾を飲み込んでブラウスを広げてみる。
見るからに美麗なバストがローズピンクのブラジャーに包まれていた。宮間と同じように蝶か花をイメージした刺繍が施されていて、フルカップなのに深い谷間がもうこぼれていた。サイズを確認すればF65だった。つまり優美先生のバストは88センチだ。
(Fカップじゃ小さいんじゃないんですか? おっぱい苦しそうですよ)
不慣れな手つきでフロントホックを外す。カップを捲ってみればやや外向きにふくらむ巨乳がぷるんとこぼれおちた。小さくコンパクトにまとまった乳首がU字型の乳房に載っている。そこに栗色の長い髪の毛が垂れ下がっている眺めがフェチっぽく艶めかしかった。
おれは優美先生の髪を背中に流し、しゃがみ込んだまま左右の乳房を鷲掴んだ。発展途上中の宮間とは違い、すでに女体として完成した優美先生のふくらみは柔らかさにあふれていた。ぷにぷにと頼りなく、その一方でしっかりとした弾力も跳ね返ってくるのだ。
(ハァハァ……優美先生のおっぱい、めっちゃ柔らかいですね――ハァ、ハァ)
鷲掴んだまま円を描くようにまさぐってみる。あるいは手のひらに載せて弾ませ、Fカップが波打つ様子を堪能した。左右の乳首を吸いまくるとお姉さんに甘えるマセガキの気分になり、ノスタルジックな恍惚感にめまいを覚えた。
たまらなくなったおれは下半身を露出し、優美先生の眼前にフル勃起を差し出した。ち○ぽを見られるのが夢だった。たとえ相手が静止していたとしても――。
(優美先生のおっぱいでこんなになっちゃいましたよ……ハァ、ハァ。彼氏さんとおれ、どっちがち○ぽでっかいですか?)
「……」
巨乳の女子大生は答えない。ただ、彼氏のち○ぽに飽きてきたの――という妄想のなかの返事がおれのハートを熱くした。
(誰にも言わないんでHしましょうよ。優美先生のことは前から気になってたんです)
(ええっ……そんなこと急に言われても、私……)
(ね――お願い。一回だけでいいんで)
(……)
妄想のなかで戸惑う女子大生のリアクションを、おれはイエスの意味に捉えた。クリスマス前に寝取ってしまうスリルがたまらない。
おれは血管を浮かせて怒張するち○ぽをFカップの谷間にあてがった。そして左右の乳房を手繰り寄せ、きついくらいに挟み込んだ。初めて体験するパイズリは天国だった。マシュマロみたいなやわらかさがフル勃起を優しく包み込むのだ。
(っあ――気持ちいいっ……優美先生の谷間、すっげェあったかい……)
(ダメ……恥ずかしい)
(どうして? 誰も気づいてないんだからいいじゃないですか)
(だって彼氏以外の男の人にやってあげるの初めてなんだもん……)
(でも彼氏のち○ぽに飽きてきてるんでしょ? たまにはほら、違うち○ぽを)
左右の乳房を手繰り寄せたまま、おれは懸命に腰を動かした。現実は優美先生が微動だにしないのでセルフパイズリするしかないが、それでも88センチの谷間は心地よかった。
挟んだまま乳房を揺らすとくすぐったい電流が肉棒を駆け巡った。
我慢汁を垂らす亀頭を乳首に押しつけると透明な粘液が糸を引いた。
圧巻だったのは寄せて上げた深い谷間にち○ぽを垂直に差し込んだ時だ。カタい愚息がやわらかな乳房に埋没し、まるで挿入しているかのような錯覚を覚えた。おれは激しく腰を動かし、三発目のスペルマが飛ぶ寸前でフル勃起を谷間から引っこ抜いた。
(ハァハァ……優美先生のパイズリ、ほんと最高。毎日やって欲しいよ、これ)
セルフでも気持ち良すぎるパイズリだ。もし優美先生が能動的にテクニックを駆使してきたら何分持つのだろう。彼氏に仕込まれているはずの技だ。きっと1分すら持たないかも知れない。
(パイズリすると気持ちいいの? 優美先生も?)
と、下半身を露出する変態的な格好のまま、おれはその場にしゃがみ込んで優美先生のタイトスカートを捲った。現役女子大生のま○こが見てみたかったのだ。C学生とは違う、完成された秘部を――。
ファスナーを上げて腰元までスカートを捲り上げ、黒いストッキングを足首まで下げおろす。ブラジャーとお揃いのショーツはこんもりと盛り上がっていた。
おれは鼻息を荒くしながらそれを脱がせ、少し乱暴に足をM字型に広げさせた。
(す、すげぇ……これが現役女子大生のま○こ……ごくん)
内側の肉壁がハミ出たスリットを、手入れされた陰毛が覆い尽くしていた。
かつてはきれいな一本線だった柔肉は、今や複雑な形状に変化している。くすんだ肌色に近い外壁のなかから、波打つような襞が現れているのだ。
ただ、その肉襞を両手の親指で広げてみるとサーモンピンクに輝く内側が見えた。上部に人型の傘をかぶったクリトリスがあり、その下に尿道口と膣穴があったのだ。優美先生のま○こは結構分かりやすく、挿入すべき穴が童貞にも分かった。
(ここが気持ちいいんですよね、優美先生)
豆粒大に突起したクリトリスを指先で転がす。神経が集中しているそれはくにくにとした触り心地で、優美先生が時を止められていなかったら身悶えて喘ぐはずのポイントだった。
おれは反応しないクリトリスをいじり続け、そして濡れないま○こに顔を埋めた。やはり宮間と同じように生体反応を封じられた身体はピクリともしなかったが。
ただ、無我夢中で優美先生の鉄くさい秘割れを舐めまくっているうちに、草食男の唾液で襞や肉壁がぬめりを帯び始めた。中指に唾をつけて膣穴に差し込んでみれば、乾いた抵抗感もなくにゅるっと滑り込んだのだった。
優美先生の穴のなかは生温かく、圧迫感のある肉壁が左右から中指を締め付けた。
(温っけぇ……)
草食系のおれには初めての感触だ。中指を包む肉壁の感触も、最奥にある行き止まりの感触も、あるいは指を折り曲げた時にぶつかる恥骨の感触も、すべて新鮮な驚きと感動に満ちていた。
おれは優美先生を椅子の上でM字開脚にさせたまま、破裂しそうに怒張しているち○ぽを摘んだ。そして、興奮と焦りとでTry and Errorを繰り返しながら、漸く先っぽを挿入することに成功した。彼氏専用に育てられたはずのま○こが、憐れな男の欲望を受け入れたのだ。
(ハァハァ……気持ちいい。優美先生のま○こ……ハァハァ、ハァ)
さすがに経験値が多い女子大生だ。おれがゆっくりと奥まで差し込むと、先っぽどころか根元まで飲み込んでくれた。肉厚な柔壁が心地よくち○ぽ全体を摩擦し、天国みたいな幸福感をおれに味わわせる。
おれはハァハァと息を切らせながら懸命に腰を動かした。フル勃起が密穴を出入りするたびに甘美なくすぐったさが神経を駆け巡る。
寝取られた優美先生は虚空を見つめたまま、88センチの巨乳をタプタプと波打たせていた。グラインドさせながらそれを鷲掴んでみれば、犯罪的な興奮に射精欲がふくらんでいくのだった。
やがて今日三回目の限界点を迎えたおれは、生温かい膣口からち○ぽを引っこ抜き、M字開脚のまま動かない女子大生の上半身に向けて射精した。
勢いよく噴射したそれは狙っていたかのように美麗な顔面にぶちあたり、それからFカップの乳房へと飛び散った。ブラウスもブラジャーもタイトスカートも精液まみれになり、漸く興奮が冷めてみればち○ぽが痛いほどに歓喜していた。
おれは優美先生の口にち○ぽをねじ込んできれいにしてもらい、最後にもう一度だけその美巨乳で挟んでもらった。
こっそりルクスなんたらの時計を見てみれば、11時36分だった針が11時4分を指していた――。
「こら。がきんちょ共。ゲームするなら家に帰ってやれ。ここはお勉強する場所でDSする場所じゃないんだよ」
巨乳の女子大生を凌辱したおれは、時間を戻すと最後の授業に臨んだ。難関C学受験コースの最上級クラスである。あらゆる模擬試験で偏差値70を超える生徒だけが集まる、いわばエリート中のエリートクラスだ。
もっとも、将来の官僚候補とは言ってもただのS学生である。授業開始5分前になっても席に着くどころか、家から持ってきたDSで盛り上がっていた。
「あとちょっと。あと3分だけ待って。もう少しでレベル上がるんだから」
「ダメ。早くしまって席に戻れ。じゃないと没収するぞ」
おれは命令口調で脅した。まぁここは学校じゃないから没収する気はないんだけど、いつまでも見逃していると教室がぐだぐだになってしまう。引き締めるところは引き締め、緩まめるところは緩めるのがこの業界の常識だった。
――と、そこへ算数の問題集を持った望愛(のあ)ちゃんがやって来た。今流行りのキラキラネームをした美少女である。
「時計算の質問なんだけどいい?」
「いいよ。なに?」
「2時20分に長針と短針が示す角度は何度ですかって――。どう考えればいいの?」
優美先生とは違って香水もデオドラントの香りもしない、天然のロリくささだ。穢れを知らない瞳と体つきが、歪んだ食指を疼かせる。
「長針と短針の動きを別々に考えな。長針は1時間に360度回転するから、20分で何度回転する?」
「360度×20分/60分で120度」
「そう。じゃあ短針は?」
「……」
望愛(のあ)ちゃんが考え込んだ。長針の動きは単純だが短針の動きは少し複雑になる。流水算とか旅人算とか通過算と同様、S学生にとっては思考を要する難問だ。
「短針は1時間経過すると一つ指針がズレるんだよ。12個あるうちから隣の1個に」
「あっ。じゃあ文字盤は全部で12個あるから、1回転360度のうち1/12個ズレて30度移動することになるんだ」
「そう。じゃあ20分では?」
「……」
また望愛(のあ)ちゃんが考え込んだ。
教卓の上に問題集を置いて真剣に考え込む様子はかわいいことこの上ない。宮間みたいな生意気さもないし、優美先生みたいな成熟さもない。ただただ純真で微笑ましいのだ。
この、無垢な身体をイタズラできたらどれくらい幸せだろう。C学生とも大学生とも違う、まさに犯罪的な快楽に溺れることができるのだ。ふくらみかけのおっぱいを触りまくり、産毛の一本すら生えていない割れ目を拝見することができて――。
「分かった。20分は1時間の3分の1だから短針の角度は……」
教室の時間が止まった。DSで騒いでいたクソガキ連中が止まり、望愛(のあ)ちゃんがピタッと静止したのだ。聖者の時計は11時4分からまた動き出していた。
(無垢なS学生にイタズラするのは気が引けるけど、これもルクスなんたらの時計があればこそだ。今時のS学生の発育を拝見させてもらうぞ。望愛(のあ)ちゃんのおっぱいはどれくらいふくらんでるのかな……笑)
そしておれは、教卓に上半身をもたれかける教え子の胸に手を伸ばした。さすがに発育の早いS学生だけあって、望愛(のあ)ちゃんの胸は微かにふくらみ始めていた。まだブラジャーを着けるレベルではないけれど、宮間と同じように張りが強い感触が手のひらに伝わってくるのだ。揉めば確かな柔らかさも感じた。中に着ているのはキャミソールではなくただのTシャツだろう。
おれは思う存分S学生のおっぱいを触り、そして今度は突き出されたお尻に興味を向けた。C学生のお尻は子供以上大人未満で柔らかかったが、子供以上子供未満のお尻はどんな感触なのだろう。ち○ぽを挟むには小さすぎるのだろうか。それとも犯罪的な快楽を満足させてくれる未成熟なピーチなのだろうか――。
おれは望愛(のあ)ちゃんの後ろに立ってジーンズを下ろした。生地がキツいから一緒にパンツまで脱げちゃったのはご愛嬌だ。S学生らしい縞々のパンツの向こうから、天使みたいなちっちゃいお尻が顔を覗かせた。
(かわいいな。C学生や大学生もいいけど、やっぱS学生はS学生なりに特別な魅力があるんだよ。絶対に穢しちゃいけないっていう、タブー的な魅力が)
そしておれが望愛(のあ)ちゃんのジーンズをパンツごと足首までおろし、無垢な割れ目を拝見しようとした時だった。
“……時を統(す)べらんとする者、吾が至宝を手に。されどルクスリアの王に魅せられることなかれ。ユダが座らんとする時、円卓は彼(か)の方陣とならん。”
鳴瀬老人から聞いたあの言葉が響いた。威厳と神聖さを備えた聖者のような声で。
(な、なんだ……!?)
おれは驚いた。どこから聞こえてくるのか分からないのだ。
するとポケットに入れていたはずの懐中時計がスゥっと宙に浮かび上がり、まばゆいばかりの光に包まれた。それは銀色で、懐中時計と同じ色だった。
望愛(のあ)ちゃんのジーンズとパンツがするすると元に戻る。まるで逆再生でもしているみたいに――。
おれは混乱した。今、目の前で起こっていることが理解できなかったのだ。
不思議な聖者の声が文言を続ける。
“ルクスリアの王、すなわち七つの大罪にて色欲を司るアスモデウス。ユダは13番目の使徒にして円卓に招かれざる客なり。吾が忠告を無視せなば、汝、神の鉄槌を受けん。五獣の王の生贄となろう。”
「……」
おれは呆然と立ち竦んでいた。宙に浮く聖者の時計を見つめながら。
ただ、そんな状況のなかで謎掛けの意味にやっと気づいたのだった。
そうだ。ルクスリアは色欲を司る悪魔アスモデウスのラテン語名だ。確か、大学の時、ヨーロッパ史の講義で聞いたことがある。みんな胡散臭そうに授業を聞いていたけれど、おれは少なからずオカルトに興味があったから覚えていた。牛・人・羊の頭とガチョウの足、そして毒蛇の尻尾を持ち、手には軍旗と槍を持って地獄の竜に跨って口から火を噴く旧智天使――それがアスモデウスだ。
そうか……それが五獣ということか。
まばゆい光にさらされながら、謎掛けの意味が次々と氷解していく。
ユダは13番目の使徒。円卓が時計だとすれば針が13を指し示すことはない。ユダは円卓に招かれざる客なのだ。それなのに彼をテーブルに着かそうとすれば――つまり1時間という制限時間を超えて性欲を満たそうとすれば、名の知れぬ聖者の警告通りこの時計が魔方陣となるのだ。アスモデウスをこの世に現臨させる、異界への扉として。
だとすればどうなる? 吾が忠告を無視せなば、汝、神の鉄槌を受けん。五獣の王の生贄となろう――!?
≪吾が名はアスモデウス。七つの大罪において色欲を司る王なり。汝が神に背きたる所業、確(しか)と見届けり。その堕落ゆえに吾が下僕とせん≫
(ち、ちょっと待ってくれ――!)
時計から姿を現した地獄の王におれは震えた。まさに五獣を身体にした恐怖の使者だった。希愛(のあ)ちゃんのカラダに悪戯しているうちに、1時間のタイムリミットが過ぎていたのだ。
≪吾に聞く耳はあらず。神に背けし堕落の使徒よ、吾が僕(しもべ)と為れ!≫
アスモデウスが軍旗を振るった。
その途端、おれはよりいっそうまばゆい光に包まれた。
(うわ……わっ……ああああ―――!)
……そして最後に視界に飛び込んできたのは、机にのしかかる希愛(のあ)ちゃんの姿と、DSを持ったまま固まる教え子達の姿だった――。
※
「塾長先生」
「なんだい? みんな揃って」
「あのね……もう授業が始まって20分も経つのに先生が来ないの。ひょっとして今日、授業お休みだった?」
「ううん、そんなことないよ。みんなどこのクラス?」
「難関C学受験コースの最上級クラスです」
「そう。ごめんね……今すぐ担当の先生呼んで叱ってあげるから」
キーボードを叩いていた塾長はそう素直に謝って講師の配置表を見た。授業を放り出して油を売っているとはなんてやつだ。これでは保護者に言い訳が立たないじゃないか。
塾長は責任者としての憤りを感じつつ下唇を噛んだ。
だが、いくら配置表を見ても担当講師の名前は見当たらなかった。新学期が始まる前に、確かに担当講師は確認したはずなのに――。
塾長は傍にいたスタッフに声を掛けた。
「池田くん。難関C学受験コースの算数担当って誰だっけ?」
「最上級コースですか? だったらその席に座ってる……あ、あれ? 誰でしたっけ?」
「……」
「……」
事務室がしんと静まり返った。誰も、神の鉄槌を喰らった一講師の存在など覚えていなかった。
空しく存在を誇示するかのようなテキストの残骸が、眉をひそめる塾長の向かいの席に広がっていた――。
Episode1「聖者の時計」END。
※諸説ありますが、ストーリーの展開上、ユダが13番目の使徒という通説に従わせて頂きました。