「どうせまた枕だろうな〜」と思いつつ会議室に入りました。
枕というのは枕営業のことで、キャスティングの権限を持ってる偉い人がお仕事と引き換えに女の子を、というキャンギャル業界ではよくあることです。
そこまで上昇志向が強くない私は断るつもりだったのですが、その人の口から出た言葉は意外なものでした。
「君、うちの会社に来ないか」というのです。
その人はある大企業のオーナー社長でもあり、そういえば他の人が「社長、社長」って呼んでいたので会社を経営してるんだということは気付いていましたが。
「○○っていう会社だけど知ってる?」というので誰もが知ってる大企業なので「はい、知ってます」と答えると「君は受け答えがきちんとしてるし仕事もできそうだ。容姿も抜群だし、もし来てくれたらぜひ受付か秘書でと思ってるんだ。短期大学部だから就職活動はもうしてる?」というので「今いろいろ調べてるところです。」と答えました。
「うちのような会社に興味はあるかね」というのでこんなチャンスは2度とないと思い、「はい、ぜひお願いします」と答えると、人事に話を通しておくから、という話になったのです。
夢のような話です。
私の大学からはとてもじゃないけど今の就職難の時代に通る人などいない人気企業。
しかも社長自ら声をかけてくれたという話ですから、まず間違いはないだろうし。
でもやっぱ体と引き換えってことでしょ、でもあそこに就職できるならいいか、とか思いは巡ります。
翌日、早速人事の人から電話があり、履歴書をすぐ送るようにと言われたのでその日のうちに送ると早速電話があり、来週月曜日の1時に本社に来るように言われ、前日にあわてて買った紺のリクルートスーツに身を包み、出かけて行きました。
最初に会議室に通されると、小柄で地味な、お世辞にもかわいいとは言えない子が先に待っていました。
2人一緒に簡単な筆記の適性試験を受けた後、面接に入りました。
もう一人の子は縁故入社らしく、お父さんがこの会社の取引先の社長らしくもう決まったかのような話しぶりです。
私はあくまで社長の知人の紹介、ということになっているらしく、大学のことやバイトのことなどを聞かれました。
終わるとその日の夜にすぐ、「秋月さんには次の社長面接に進んでいただきます。」と連絡があり、金曜日の5時に再度来社するように言われました。
そして約束の日時に来社して受付で用件を告げると、背が高くて派手目なルックスの、ブラウスの上からでも明らかに巨乳と分かるフェロモンの塊のような社長の秘書らしきおねえさんが降りてきて社長室へと案内されたのです。
この人を見て私にはすぐピンときました。
「私とそっくりなタイプ、絶対社長の好みね」
そしてこの予感は見事に的中することになります。