「ちょっと!あんたたち何やってるのよ!」
カナはその声に聞き覚えがあった。いや、聞き覚えなんてレベルじゃない。忘れたくても忘れられない声だった。
カナたちが振り返ると、どうやら騒ぎを聞きつけてやってきたらしい、女子二人組が立っていた。
「あら?!カナじゃない?!」
声の主は、カナの宿敵レイコであった。
カナたち六人組と、その足元に倒れ込んで泣いている二人組。どうやらこの二人組はレイコと同じ第一高校の生徒だったらしい。
頭の良いレイコは、すぐに状況を察した。
「カナ?これはどういうことか説明してくれる?」
「どういうことって、勉強ばっかりしてて礼儀知らずの第一高生が調子に乗ってたから、ちょっと注意してあげたのよ」
「調子に乗ってるのはあんたじゃない?どうせまた変な言いがかりつけてうちの生徒に手を出したんでしょ?まったく懲りないのね…」
カナとレイコの間で火花をバチバチと散らすような口撃の応酬がなされているが、サキたち5人の耳にはほとんどその言葉は入ってきていなかった。
彼女たちは、カナが口論している相手、つまりレイコの胸部へ視線をくぎ付けにされてしまっていた。
競泳水着が、こんないやらしいシルエットになってしまって良いのだろうか。
水着の内側にバスケットボールを2つ詰め込んでいるのではないかと思うほどの常識外れの膨らみ。
今にもその内側からの圧力に負けて水着の生地が千切れ飛んでしまいそうだ。
それでいて、レイコがしゃべる度にふるふると揺れるその胸は、決して詰め物などしていない天然バストであることを強く主張している。
カナとて、例外ではなかった。中学卒業以来、いや中3クラス替え以来、極力顔を合わせないように避けていたため、レイコと相対してまともに会話するのは2年半ぶりくらいになるだろう。
かつて自分の自慢のバストを完膚なきまでに叩き潰し、自分のプライドをズタズタにした憎き胸。
レイコに敗れたことで立場を失い、味わった屈辱的な出来事の数々。
いつの日かリベンジを果たすべく、秘かにバストアップに励んだ涙ぐましい努力。
それらの記憶が走馬灯のように甦ってくる。