その日、妹は午前中、お盆休みで帰省中の姉に宿題を教わった後、午後になって、少し離れたIの家に遊びに行った。
Iの家には、6年生になってクラスが分かれたJ,Kも招かれていて、1年前と同じ4人仲間で、賑やかになった。
あの事件の後も、ときどき一緒に遊ぶ関係は続いており、胸に関する気まずさも、時の流れとともに薄くなっていた。
妹には未だ成長期が訪れていなかったが、他の3人は急に大きくなり、Iなどは身長160cmを超えていた。
太めのI,Jの胸は、一段と大きくなり、夏の恰好をしているとことさらに目立った。
特に大柄なIは、腹も胸も、前に横にと出ていて、迫力があった。
今日のIは、薄くぴったりとしたTシャツを着ていて、前から見るとブラジャーの大きなカップが透けていたし、カップに収まりきらず上に持ち上げられた肉の丸みもわかった。
カードゲームをしていて前屈みになると、開いた襟元から、ブラジャーに収まりきらない2つの膨らみが見えた。
妹は、Iの胸はもはや確実に、姉のボリュームを超えていると思った。
あの事件以来、胸の話は暗黙の御法度になっていたが、Iの胸が気になってしようがなかったのか、Kがついに、それを破った。
「I、おっぱいまた大きくなったね。すごい!」
皆、一瞬こわばったが、数秒後にJが続いた。
「ほんとだよ。何カップあるの?
さっきちらっと見えちゃったけど、
ブラジャー、小さいんじゃない?」
Iは自分の胸を見下ろすと、あの事件を気にしてか、妹に気配りしてか、謙遜して答えた。
「ううん、太ってるだけだよ。
お腹もこんな出ちゃってるし、
体重がいま60キロもあるの。
ブラも、一応Dつけてるけど、
アンダーが80もあって・・・
ただのデブだよね。」
「そんなことないよー。
Dカップなんてすごい!
・・・そういえばJも胸大きいよね。
Jは何カップなの?」
Kは、普通体型で胸もそれほど大きくないからか、あまり配慮がない。
容赦なく胸の話を盛り上げる。
「わ、私は・・・
一応、私はCつけてるけど」
戸惑いがちのJ。
「えっ、
確かにJも大きいけど、
Iと1カップしか違わないんだ!?」
「いや、私はアンダー75だから、
Iより、ふたまわりは小さいの。
D80のカップは、
E75とかF70と同じくらいのサイズだから。」
「ふぅん、アンダーでサイズって変わるんだぁ。」
「知らないの?
しかもIはD80がきつそうだけど、
私はC75でぴったりだから、
おっぱいの大きさは3段階くらい差があるんだろうな。」
妹は、Iの胸に圧倒された上に胸の話が出て、気まずい相槌を打っていた。
まだブラジャーをしていない妹は、初めてアンダーの意味を知った。
『確か、お姉ちゃんのアンダーは65。Dカップ。
IのサイズD80をアンダー65に直すと、
D80=E75=F70=G65だから、Gカップ!
お姉ちゃんよりも全然大きい!』
妹は悔しい気持ちになった。
体重が60kgもある太ったIと、
40kgくらいしかなさそうな、華奢でスレンダーな姉を比べても仕方ないのだが、
それでもお姉ちゃんが大差で負けてしまうことが、悔しかった。
Kに誘導されて、I,J,Kの3人はしばらく胸の話を続けていたが、最後にJが妹の方を向いてフォローした。
「でも、お姉ちゃんに比べたら、私たちの胸なんて、全然大したことないよね。」
3人が頷いた。妹は、
「え・・・そうかな」
と誤魔化した。
もちろん3人は、あの事件以来、姉の胸は巨大だと思っている。
『みんなそのまま、何事もなく、
そう騙されていてくれればいいの・・・。
そうすれば、私はぺったんこでも、
いじめられることはないんだから。』
・・・しかし、運命のいたずらは、すぐそこまで迫っていた。