Page 336 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 通常モードに戻る ┃ INDEX ┃ ≪前へ │ 次へ≫ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼ねがい〜第一部〜 暇人ゴーストライター 04/4/2(金) 11:10 ─────────────────────────────────────── ■題名 : ねがい〜第一部〜 ■名前 : 暇人ゴーストライター ■日付 : 04/4/2(金) 11:10 -------------------------------------------------------------------------
僕の名前は田中コウジ。今は高校二年生だ。今から中学の頃のちょっと甘い思い出を話そうと思う。 確か僕が中学3年の時の夏の頃だったような気がする。その時僕はS中の卓球部に所属していた。S中の卓球部は先輩が強くて有名だった。県大会の上位に食い込むほどだった。 けれど、僕ら後輩はどうしようもなかった。「他の運動部より楽だから、サボれるから」という理由で入部したヤツがほとんどで、毎日練習に来るヤツといえば、僕と、友人の手塚ヒロキくらいだった。 もうそろそろ中学最後の地区予選が近くなり、僕はいつもより朝練をみっちりやるようになった。僕は朝が苦手だったが、手塚がケータイで起こしてくれた。 そんなある日、僕はいつもの手塚のケータイで起きた。 「はい」 「もしもし田中?ゴメン、今日学校休むわ。風邪ひいちゃってさ」 「え?じゃぁ練習どうすんだよ」 「悪い、一人で練習してくれ。壁打ちとかでもなんでも。ホントゴメン。」 「ったくよ、もう夏だってのに、風邪なんかひくなよな。わかったわかった、今日は一人で練習するからさ、ゆっくり休めよ」 「ありがと。あ、あとさ、最近学校で盗難流行ってるんだって。部室のカギ、ちゃんと閉めて、貴重品に気をつけとけよ」 確かに最近、盗難が多い。どっかの不良生徒の仕業だろ、どうせ。 …アイツじゃなければいいけど。 「おう、気をつけるよ。じゃぁもう俺朝飯食って行くから。」 そう言って僕は電話を切った。 梅雨の時期で雨が降りそうだったので、学校までの道のりを僕はいつもより速く歩いた。練習時間も勿体無いし。でもその日は、僕の大好きなB'zのニューアルバムが発売される日だった。もし雨が降っても学校帰りに買うつもりだった。 いつものように部室に入り、ジャージに着替え、体育館二階の卓球場へ行く。手塚の居ない卓球場はちょっと寂しかった。 手塚が言ってくれたにも関わらず、練習し始めてから約30分して、自分が部室のカギを閉め忘れていたことに今さら気がついた。やばいやばい。財布も忘れた。今日はアルバム代が入ってるのに! 急いで部室に入った。そこで信じられない光景を見た。高梨だ。高梨が僕の財布の中身を盗もうとしてたのだ。 「コウジ君!?」 「おい!何やってんだ!返せよ!」 怒りに任せて取り返した。でもそれ以上に僕はショックを受けた。彼女、高梨ユイは当時の、僕の片思いの相手だったのだ。不良グループに居て、授業中先生を馬鹿にしたり、授業をバッくれたり。 彼女は周りの女子よりセクシーだった。プロポーションが抜群で、ケバイ化粧を落とせば結構可愛い。巨乳アイドルに負けてない。そのうえ、男子たちに遊び半分に自分の胸を触らせてあげたりするものだから、男が寄ってこないはずがない。 僕は彼女のことが好きだった。中学入学時に僕がS中に転校して来た時、一番最初に自分に話し掛けてくれたときの嬉しさからだった。それから今まで、友達同士の関係だった。でもいつか、この願いを叶えたかった。そんな高梨が、僕の金を盗もうとしたのだから、ショックが大きかった。 二人はしばらく無言のまま立ち尽くしていた。 |