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 ▼One Night Heaven 〜第一章〜  Angel Heart 06/5/7(日) 20:24
   ┗Re(1):One Night Heaven 〜第一章〜  ? 06/5/7(日) 23:07

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 ■題名 : One Night Heaven 〜第一章〜
 ■名前 : Angel Heart
 ■日付 : 06/5/7(日) 20:24
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   「ボクたちきっと騙されたんだよ。だって約束の時間から1時間も過ぎてるんだもん」
「そうだよ、裕史の言う通りだって。これ以上待ってもムダなんだからさ、もう帰ろう」
 亮太たちがなんとボヤいても、オレはぜったいに帰りたくなかった。やり取りしたメールから考えれば、お姉さんたちが悪者じゃないのは明らかだったからだ。待ち合わせに遅れているのは、きっと理由があってのことに違いない。
「だったらお前らだけで帰れよ。オレは一人でも待ってるから」
「…………」
「…………」
 そう冷たく突き放すと、裕史と亮太が黙った。「騙された」とか「帰りたい」とか言っているクセに、本当は行きたくて仕方ないのだ、お姉さんたちが待つ女子寮に。
 技術家庭の時間に作ったホームページ。その素材の一つにとあるMIDIファイルを使ったのがきっかけだった。
 プロ顔負けのその音楽は、“聖フォレスト音大”に通うひとりのお姉さんが作曲し、自分のサイトで公開して無料配布していた。その曲をホームページのBGMに取り入れてみると、味気なかったページが急に息を吹き込まれ、ついにはコンクールに出展できるまでになったのだ。リーダーはオレが、デザインは裕史が、そして専門的な作業は亮太が担当していた。

『ありがとうございました』

 そんなお礼からメールのやり取りも始まった。
 お姉さんは始め、掲示板の方にレスを書き込んでくれていたけど、オレが携帯のメアドを教えるとそちらに返事をくれるようになった。“麗華”という名前だと分かったのも、そんな関係になってからのことだ。
 あとはもう芋蔓式にお姉さんたちと仲良くなっていった。麗華さんがオレのことを友達に喋ったらしく、彼女以外からもメールが届くようになったのだ。とうてい一日では返信し切れない着信数だった。
 ――で。
 つい最近、そのコンクールに出展したホームページが最優秀作品に選ばれた。それを麗華さんたちに伝えると、オフ会を兼ねてお祝いしてくれる話になったのだ。直接会ってみたいという気持ちが、オレの方にもお姉さんたちの方にも芽生え始めていた。

「ねぇ、さっきからお巡りさんがこっち見てるんだけど……」
 待ち合わせの場所は駅西口の噴水の前だった。お泊りグッズを持ったガキがずっと立ってるもんだから、家出かどうか怪しんでいるのだ。電車を乗り継いでやってきた見知らぬ町には、信じられないほど多くの人が往来していた。
「放っとけよ。べつに悪いことしてるわけじゃないんだから」
 相変わらず裕史はチキンだ。
「俺、やっぱあと5分経ったら帰るよ」
 と、そう亮太が呟いた時、こちらに向かって来るお姉さんが見えた。フリンジのスカートにニットのセーターを着ている。栗色のセミロングが夕陽に輝いていた。どっからどう見ても女子大生だ。麗華さんって、こういう人だったのか。
「麗華お姉さんっ?」
 声を掛けられるより先にオレは叫んだ。するとそのお姉さんは微笑んで立ち止まった。
「残念でした。私は麗華さんの代理で茜だよ。キミが淳也クンかな?」
「うん」
「初めまして。お隣にいるのがお友達?」
「こっちのチキンが裕史で、メガネ掛けてるヲタクが亮太」
「ヲタクとか言うなよ」
「チキンじゃないってば」
 アハハ、と茜さんが笑った。
「三人とも仲良しなんだ。なんかホッとしたな、想像通りの男の子たちみたいで」
 それはこっちも同じだった。期待通りと言うか、期待以上にきれいなお姉さんだぞ。
「それより来るの遅れちゃってゴメンね。実は寮にケイタイ忘れてきちゃって、連絡取ろうにも取れなかったの」
 なんだ、そういうことだったのか。
「べつに気にしなくていいですよ。こいつらは今帰るところだったし、オレは何時間でも待つつもりだったから」
「え? 二人とも帰っちゃうの?」
すると亮太が首を横に振った。
「帰らないってば!」
「だって『これ以上待つのはムダだ』とか言ってたじゃん」
「言ったけど、でもそれは行きたくないっていう意味じゃなくて、待ってるのに飽きてきたから……って言うか、裕史が『騙された』とか余計なこと言うから……!」
「ボク!?」
 もちろんからかっているだけなんだけど、亮太たちはすぐマジになるから面白い。根が真面目なんだ、こいつらは。
「要するに、三人とも来るんだよね?」
 茜さんが言った。
 オレたちは同時に頷いた。

 それから茜さんが運転する車に乗り込んだオレたちは、女子寮に着くまでの時間を雑談で費やした。
なんでも渋滞に巻き込まれたとかで、カーナビとにらめっこしながら迂回して来たという。待ち合わせに遅れたのはそのためだったのだ。
後部座席には、ワインやらフルーツやら、様々な食べ物が山と積み込まれている。どうやら迎えのついでに買出しも頼まれたみたいだ。
「三人に手料理を振舞うんだって、もうみんな張り切っちゃって。――笑」
「お姉さんたちが作ってくれるの?」
「普段は交代制で作るんだけど、今日は特別な日だからみんな総動員」
 ハンドルを握る横顔がきれいだった。……って言うか、助手席から見るとけっこうおっぱい大きいぞ。Dくらいだな。
「85センチ」
「えっ?」
「茜お姉ちゃんのおっぱい。当たってる?」
「突然なに言い出すんだよ! 茜さんに失礼だろ!」
 亮太が慌てふためいたけど、とうの茜さんは全然怒ってなかった。
「ハズレ。あと1センチ大きいもん」
「なんだ、当たってると思ったのになぁ」
 オレがエロガキだってことは、メールを通じてとっくにバレている。だから今さら猫をかぶる必要もなかったし、むしろそういうオレを麗華さんたちは面白がっていた。理解あるお姉さんたちでホント嬉しい。姉貴にサイズ聞いたらぶっ飛ばされたからな。
 やがて車が“聖フォレスト音大”の前を通り過ぎた。世界で活躍する音楽家を送り出してきた、名門中の名門校だ。声楽科、作曲科、演奏科、そして指揮科。未来のソリストやマエストロを目指すお姉さんたちが、日々技術を磨いている。
「茜さんは何を専攻してるんですか?」
 亮太が訊ねた。茜さんがギアを落とし、広い通りを左折する。
「私は演奏科でパイプオルガンが専門。昔ウィーンに住んでいたことがあって、その時に初めて教会で本物の演奏を聴いたの。それからはもうずっと教会音楽の虜って感じ」
「それじゃ、バッハとかパッヘルベルとかフレスコバルディとか弾けるんですか?」
 食いついてきたのは裕史だ。
「もちろん。でも凄いね。普通はフレスコバルディとか知らないよ」
「ボク、クラシックとか絵画とか、ヨーロッパの芸術に興味があるから……」
 だからホームページのデザインを任せたのだ。
でもオレにはチンプンカンプンだった。バッハなら音楽室の肖像画で知ってるけど、パッヘルとかフラスコとか言うやつは知らなかった。やっぱコイツらも夜になると目が動くんだろうか。
「次の十字路を右折すればすぐだから」
 茜さんが言った。
 夢にまで見た場所はもう目の前だった。

「…………」
「…………」
「…………」
 車から降りたオレたちは、“聖母寮”を見て呆然と立ち竦んでしまった。こんな豪邸を建てる金持ちはどんなやつだ……と思っていたら、なんとそれが“聖母寮”だったのだ。
 凹型をした3階建ての造り。まるで宮殿のような建物は、煉瓦製の塀でガードされていた。正門にはセンサー式の外灯が立ち、広い駐車スペースも設けられている。何台もの監視カメラが設置されているのは、もちろん、お姉さんたちの安全を守るためだ。
「そんな所に突っ立ってないで中に入ってよ。みんな待ってるから」
 買い物袋を抱えた茜さんがエントランスに向かう。
 オレたちもそれに続いた。

                ◇◇◇

「えー……それではみなさんお集まり頂いたようですので、これから淳也クンたちの“コンクール入賞祝賀会”兼“オフ会”を始めたいと思います。私が寮長で声楽科4年の西九条彩子です。どうぞ宜しく<(_ _)>」
「いよっ、待ってました幹事長」
「だから幹事長じゃなくて寮長だってば」
 アハハ、とその場にいた全員が笑った。広いダイニングルームには、帰省中の人たちを除いて、全部で18人のお姉さんたちが集まっている。
「これまでメールの向こうの存在でしかなかった淳也クンたちに会えると思うと、夕べは緊張してぐっすり眠れました」
「綾小路きみ○ろかよ!」
 また全員が笑う。彩子さんってけっこう面白い人かも知れない。
「思えば淳也クンたちが麗華のMIDIファイルを見つけなければ、私達は一生出会う事がなかったでしょう。たとえ世界中の人々がインターネットで繋がっている現代だとしても、同じ日本に暮らす女子大生と男の子とが、たった一つのファイルで出会う確率は奇跡に近いと思います。素敵な曲を作ってくれた麗華に、そしてそれを見つけてくれた淳也クンたちに感謝します」
 彩子さんが頭を下げた。寮長を任されている理由が分かる気がした。
「では皆様お手元のグラスを。――最優秀賞に乾杯、素敵な出会いに乾杯!」
 乾杯、とオレは隣に座る麗華さんとグラスを合わせた。本物の麗華さんは、想像を超えるほどきれいなお姉さんだった。ウェーブのかかった長い髪にスレンダーな体。ピアノで洗練された指がすごく印象的だった。
「ごめんね、お姉さんたちだけお酒で乾杯して」
 麗華さんがグラスを口に運ぶ。裕史と亮太も、離れた場所でお姉さんたちに囲まれていた。
「じゃあ、オレもワインを」
 と、ボトルを掴もうとすると、パシッと麗華さんの手がそれを窘めた。
「駄〜目。これは大人のお薬なんだから、淳也クンが飲むと死んじゃうんだぞ」
「…………」
「あ、信じてないな? でも本当なんだから」
 麗華さんがボトルを脇にどける。さっきから香水のいい匂いがする。
「“Angel Heart”のプラチナ? 麗華さんがつけてる香水って」
「なんで分かるの?」
「だって姉貴に買わされたことがあるもん。着替え覗いた罰に」
「お姉ちゃんにもちょっかい出してるの!?」
 驚いたのはまりあさんだ。オレのエロメールに乗ってくる激カワ女子大生。写メちょうだいって言ったら、頼んでもないのに“☆胸チラ(^^)v”でくれた。
「時々ね。マジでかいんだ、姉貴のおっぱい」
「で、思わず着替え覗いたら見つかっちゃったんだ?」
「首根っこ掴まれて殺されかけた。おまけに“Angel Heart”のプラチナ無理やり買わされるしさ。もらったお年玉一瞬で消えたよ」
「当たり前でしょ。1つ5万円もするんだから」
 そんな香水を普通につけてるんだから、麗華さんはきっとお嬢様だ。
「それにしても、ホント淳也クンってHだよね」
 麗華さんの向こうから、舞さんがオレを覗いてきた。亮太好みのショートヘアだ。
「年上のお姉さん以外に興味ないんだもん。これってヘンかな?」
「明るいスケベだからOKだよ。弟の友達なんかね、家に泊まりに来た時、私の部屋からこっそりブラ持って行こうとしたんだよ」
 舞さんには弟がいるのか。
「――で、どうしたの?」
 麗華さんがお皿にパエリアを取ってくれた。テーブルクロスが掛けられた長テーブルには、これでもかというほどの手料理が並んでいる。
「現行犯で捕まえたから速攻でお仕置き。手首と足首縛って、手コキで連続3発の刑」
(い、いいなぁ……)
「それキツイよ。――笑」
「そしたら二度と家に来なくなった。ムッツリはキモイって」
 オレはウーロン茶を飲んだ。裕史が俯いてモジモジしていた。亮太はお姉さんに抱きつかれて顔を真っ赤にしている。
「それに比べて淳也クンは分かりやすいスケベだからいいよ。悪気もないし」
「メールでいきなりバストサイズ聞かれた時はびっくりしたけどね」
 と、麗華さんがスプーンでパエリアをお口に運んでくれる。ハイ、あ〜ん。
「でも淳也クンなら許せるかな(笑)」
「なんか面白い弟ができたってカンジだしね」
 まりあさんが前のめりでポテトサラダを取った。腰パンだからパンツがこんにちは。
「Tバックはいてんの?」
「これ?」
 まりあさんがローライズを広げて見せた。白い桃肉をピンク色のT生地が覆っている。
「見せパン。ホントは見せパンじゃないけど」
「だったら見ようっと」
 思いっきり見ても隠さない。姉貴に同じことしたら回し蹴りが飛んでくるのに。
「こら。おちん○んおっきさせてないで食べなさい。せっかくみんなで作ったんだから」
 ぐいっ、と麗華さんがオレの腕を組んで引っ張る。
 88センチのFカップが、ムニュムニュと押しつけられていた。


                                   ――続く。

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   期待の新作!楽しみにしてま〜す!!

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