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 ▼聖フォレスト女学院高校文化祭〜第一章〜  Angel Heart 05/9/28(水) 17:07
   ┣〜校内放送〜  Angel Heart 05/9/28(水) 17:09
   ┗Re(1):聖フォレスト女学院高校文化祭〜第一章〜  防人 05/9/28(水) 17:13

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 ■題名 : 聖フォレスト女学院高校文化祭〜第一章〜
 ■名前 : Angel Heart
 ■日付 : 05/9/28(水) 17:07
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 そのポスターの存在に初めて気がついたのは、午前中の営業が終わり、いったん会社に戻るために乗った電車の中でだった。
 深い溜息をついてどっかりとシートに腰をおろすと、モラル啓発のポスターとともにその張り紙が目に飛び込んできたのだ。白を基調としたデザインのポスターからは、なぜか神々しいオーラが放たれていた。

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         ☆ ’05聖フォレスト女学院高校文化祭☆
         テーマ“Angel Heart〜翼なき天使たち〜”
[日 時]平成17年10月8日(土) 午前9時30分〜午後4時30分
[場 所]聖フォレスト女学院高校<聖フォレスト女学院高校前バス停より徒歩3分>
[内 容]クラス展示/模擬店/演劇部発表/吹奏楽部発表/有志発表……etc
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(へえ、文化祭の宣伝か)
 目を細めて文面を読み終えると、俺は心の中で頷いた。たぶん、女子高の文化祭と知って頬が緩んだのだろう。向かいに座っているOLが気持ち悪そうに俺を見つめていた。
(そう言えば高校ンとき、似たようなポスター作らされたっけ)
 ふと思い出がよぎる。高校時代と言えばもう10年以上も前の話だ。当時、物の弾みで生徒会をやっていた俺は、友人と一緒に文化祭のポスターを作ったことがあった。ああでもないこうでもないとさんざんにデザインを議論し、ようやくでき上がったポスターを必死でチャリ漕いで頒布し回ったものだ。勝手にホームに貼っては駅員に怒鳴られ、宣伝にかこつけては女子大の寮に足を運んだ。あるいは他校のポスターを引っ剥がすと、運悪くその学校のやつらに見つかって喧嘩になったこともあった。今思い出せばみんなセピア色の思い出だ。
(それに比べて今の俺は)
 と、自嘲気味に微笑む。向かいに座っていたOLが気味悪そうに顔を背けた。
 コピー機メーカーに就職してはや9年。同級生たちは結婚して家庭を持ち、職場でも責任ある役職を任されているというのに、俺はまだ一介の営業マンに過ぎなかった。毎日課せられたノルマを達成すべく方々を歩き回り、下げたくもない相手にヘコヘコと頭を下げている。外回りが終わって社に戻れば上司の説教、アパートに帰れば誰もいない部屋が俺を待っている。唯一俺の心を温めてくれるのは、冷め切った弁当をレンジに入れてくれるコンビニの女子店員だけだった。
(昔に戻りたいよ)
 そう思う。もし人生にリセットボタンがあったら、あるいはテレビゲームのようにSAVE&LOADできたら、今の俺は迷うことなくそのボタンを押すだろう。もう一度人生をやり直したい。昔選んだ選択肢を選び直して、今よりももっと幸せな人生を歩みたい。
(ああっ、くそっ。またネガティブな発想に。だから俺には彼女ができないんだ)
 俺は首を振って邪念を払った。今現在の境遇を考えるといつもこうだ。思考回路が常に過去を見つめる。後ろばかり見ていても前に進めないと言うのに。
 けれど今日一日ぐらいなら、たった一日だけなら現実から逃避しても許されるかも知れない。十数年前のあの頃のように、またお祭り気分を味わってみたい気がする。
(ちょっと寄ってみるか)
 俺は携帯の電源を切った。上司から連絡があっても無視できるように。

                  †

 聖フォレスト女学院高校のキャンパスは、大勢の訪問客でごった返していた。誘導灯を持った警備員が駐車場近辺に立ち、手際よく車の往来を捌いている。そうかと思えば小中学生のグループが、模擬店で買った綿飴や水風船を手にはしゃぎ回っているのだ。ギターケースを背負って歩いているのは、発表を控えた有志バンドのメンバー達だろうか。
「すげぇな」
 自分だけスーツを着込んでいることに違和感を覚えながら、俺は呟いた。客の多さにではない。聖フォレスト女学院高校のキャンパスに、だ。
 まるで天空から舞い降りた神殿。その総てが白亜の大理石だ。西洋の庭園をモチーフにした広場には、女神のオブジェが聳え、来訪する人々に癒しのオーラを放っている。俗に言うお嬢様学校だとしても、これは桁外れだ。

「午後1時半から体育館で演劇部の発表を行います! 宜しくお願いします!」
「1年E組ではお化け屋敷をやっています! 是非来てください!」
「文芸部の作品集が欲しい方は図書室にご来場下さいっ、お願いしま〜す!」

 方々で呼び込み担当の生徒がビラを配っていた。清潔感溢れるブラウスにチェックのスカートを履いた、翼なき天使たちだ。俺は演劇部の案内を貰うと秋晴れの路地を進み、昇降口と呼ぶには広過ぎるエントランスホールに向かった。
 ――と。
 パンパン、パパンッ!
 不意に破裂音が響いて頭上に何か降りそそいだ。見れば浴衣を着た天使が二人、俺に向けてパーティ用のクラッカーを放っていた。
「キリバンゲット、おめでとうございまぁす☆」
「ハぁ?」
「お客様でちょうど777人目の来場者です。BIG確定、ドル箱お代わり大歓迎です!」
 何を言われているのか分からなかった。キリバンって、あのネットの――?
「わ」
 浴衣を着た女の子のひとりが、俺の手を掴んでぐいぐいと引っ張ってゆく。
 連れて行かれたのは、エントランスホールに設けられた受付の前だ。“文化祭実行委員”の腕章をつけた生徒が、意味ありげな目で俺を見つめていた。
「隊長。キリバンゲッターさん、連行しました」
 浴衣を着た女の子が敬礼する。一体なんなんだ。
「ご苦労様。配置に戻ってカウント再開ね。次のキリバンは888と999、それから1000人目の来場者だからよろしく」
「イエス、サー!」
 浴衣を着た女の子が戻ってゆく。
「あの……」
 と、喋りかけた俺を遮って受付の女の子が口を開いた。
「キリバンゲット、おめでとうございます。これが“プラチナカード”になります」
「…………」
 手渡されたカードを見つめる。キャッシュカードのように黒い帯をまとった、天使がデザインされたカードだ。<VIP‐777>と、俺の来場者番号が刻まれている。
「これって……」
 尋ねると、受付の女の子が言った。
「そのカードを持っていると“裏文化祭”に参加できるんです」
「う、裏文化祭?」
「そうです。今日、この学校の中では、通常の文化祭と並行して“裏文化祭”も開催されているんですよ。でもそのイベントに参加できるのはキリバンゲッターの方だけで、そのカードが入場許可証になるんです。一応、初期ポイントとして100‐Angel Heart登録されてますけど、使い方によっては増えたり減ったり……」
「ち、ちょっと待ってくれ」
 俺は説明を遮った。
「そのAngel Heartって言うのはなんだ?」
 すると受付の女の子が小さく咳払いした。
「裏文化祭の通貨です。通常の文化祭と違って、裏文化祭の方では現金が使えないので」
「ああ。つまり、キャッシュカードの玩具みたいなもんだ?」
「まぁそんなところです。でもちゃんと磁気情報も記録されてるんですよ」
 ――へぇ。
「ただし、ポイントを使い切ってしまうと模擬店で遊べなくなるので注意して下さい。それから再発行もしてませんので、絶対に紛失したりしないようにお願いします」
 ずいぶん手の込んだ企画だ。そう思った。
「で、普通の文化祭と裏文化祭じゃ、何が違うの?」
 だが受付の女の子は微笑むだけだった。
「それは行ってからのお楽しみです。会場は新校舎の3Fになりますので」
 それっきり何も説明しようとしてくれない。会場へ続く廊下を指差しているだけだ。
 俺はプラチナカードを胸ポケットにしまった。
 キリバンを逃した客たちが、続々とエントランスホールにやって来た。

                  †

 エレベーターで3Fまで上がり、新校舎へ続く渡り廊下を真っ直ぐに進んでいくと、やがて巨大な扉の前に辿り着いた。荘厳な紋様が彫り込まれた、観音開きの扉だ。その両脇には制服を着た女の子が二人、まるで門番のように立っていた。
「キリバンゲッターの方ですか?」
 ひとりが言う。ああ、と俺は答えた。
「ではプラチナカードをお見せ下さい。ここから先は許可証が無いと入れませんので」
 言われるがまま、胸ポケットからカードを取り出す。途端、二人の表情がパッと明るくなったのだった。
「ご来場ありがとうございます! 聖フォレスト女学院高校裏文化祭へようこそ!」
 そうして、二人は重そうな扉を開け放ったのだ。

                  †

「をををををををを――――っっ―――――ぉ!!」
 裏文化祭の会場に一歩足を踏み入れた途端、俺は予想もしていなかった光景に叫び声を上げてしまった。ブラックライトで青く光る廊下に、数十人の女子高生が溢れ返っていたのだ。しかも全員がコスプレ。浴衣にブルマにスクール水着。中には看護婦やメイドまでがいた。おおっ、あそこにいるのはバニーガールじゃないか。
「こんにちは☆ キリバンゲッターさんですね☆」
 クラブミュージックが大音量で流れているせいで、初めその声に気づかなかった。
 ふと視線を向けると、猫耳としっぽをつけた女子高生が俺の腕にしがみついていた。
「これどうぞ☆ 模擬店の案内です☆」
(ひ、肘がおっぱいに……)
「みんな楽しいお店ばっかりですから、たくさん楽しんでいってくださいね☆」
 チュ、と彼女の唇が頬に触れた。
 一瞬、余りの嬉しさに気を失いそうになった。夢じゃないかと、そう訝しんだ。
 けれど夢でも嘘でもないらしい。俺は確かに聖フォレスト女学院高校に来て、正式な客として裏文化祭に招待されているようだ。押しつけられたおっぱいの感触が、夢ではないことを物語っている。
「な、なんか凄い文化祭だね。夜のお店みたいだ」
 すると猫耳女子高生が笑った。フサフサの毛で作られたビキニがちょっと萌える。
「夜のお店なんかよりずっと楽しいですよ。だってここにいるのはみんな現役の女子高生だし、それにお金も取られないから」
「なるほど。言われてみればその通りだね」
 俺は妙に納得した。仕事の付き合いでそっち系のお店に行くこともあるが、大抵は地雷を踏んで終わりだ。たとえきれいなコを指名しても、すぐに別テーブルから指名が入っていなくなってしまう。挙句の果てに約束と違う料金を取られたりするのだ。おかげで極貧生活を強いられたことが何度あるか。
(それに比べてこの裏文化祭は……)
 リアルタイムの女子高生だけ。おまけに諭吉や英世と別れる必要もない。
(そうだよな。女子高生と一緒に遊べることなんか、もう一生ありえないもんな)
 俺はプラチナカードを見つめた。偶然手に入れた天国へのパスポート。ここにあるポイントで、日頃の鬱憤を晴らそうと思った。ここは天使達の楽園だ。きっと願いを叶えてくれるに違いない。
「で、どこの模擬店がお勧めなの?」
 猫耳女子高生に訊ねた。
 相変わらずぐいぐいとおっぱいを押しつけながら、彼女はとある教室を指差した。


                    ――文化祭終了時刻まであと3時間14分。

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                  【校内放送】

 ……本日は当学院の文化祭にご来場頂き、誠に有難う御座います。
 ご来場の皆様にご案内申し上げます。本小説『聖フォレスト女学院高校文化祭』は、全8章+αから構成されており、作者Angel Heartの投稿作品中では最長となっております。既に全編が書き上がっておりますので、1日につき1〜2章ずつアップさせて頂きたいと存じます。
 繰り返します。本日は当学院の文化祭にご来場頂き……。

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   お帰りなさい、Angel Heart さん。
いつも大作ご苦労様です。
今度は女子高の文化祭ですか。いいですね〜(^^)
これからの展開が楽しみです。

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